2020 Fiscal Year Research-status Report
古代壁画の制作技法の伝習に関する研究-シルクロード近隣地域と日本の壁画を中心に
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19K13414
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
中田 愛乃 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, アソシエイトフェロー (40813605)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 壁画 / 古代 / 技法 / 材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、シルクロード近隣地域に現存する古代壁画を対象とし、それぞれの壁画に用いられた技法および材料を明らかにし、地域ごとの特性を比較することで、壁画の制作に関する技術がどのような経緯で日本へもたらされたのかを明らかにすることを目的とする。 昨年度に引き続き、本年度はあたり線の色材および用途に関する調査を進めた。 河北省および山西省に位置する後漢から北斉の時代に描かれた壁画を調査したところ、あたり線には黒色を呈する色材が多く使用されていた。しかし北魏および唐の時代に描かれた一部の壁画では赤褐色を呈するあたり線が確認された。次に、それぞれの線の用途に着目する。周辺に描かれた図像との位置関係から、いずれの線も、異なる題材を描くために壁面を区切る、直線状のモチーフを描くための基準とする、同一直線状にモチーフを配置するための基準とするなど、その後の工程で基準として使用することを目的に記されたと考えられる。 北宋の時代に描かれた西白兎村宋墓の壁画(現存せず)では、緑色を呈するあたり線が確認された。図版に掲載された写真ではこの線がどの段階で印されたかを判断することができなかったが、周辺の図像との位置関係から視覚的効果を目的として印された可能性もある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、COVID-19の世界的流行を受け海外への渡航および現地における調査時間の確保が難しかったことから、当初予定していた中国の陝西省および甘粛省での現地調査を見送った。これらの調査については次年度以降に組み込む予定である。一方で図版資料や文献による事前調査についてはおおむね順調であり、海外への渡航が可能となった際は、より効率的に現地調査を行うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降もあたり線に関する調査を継続する予定である。 本来であれば中国の陝西省および甘粛省にて現地調査を行う予定であるが、地域によっては引き続き渡航および調査時間の確保が困難な状況が予想される。従って当面は国外の壁画については図版や文献を中心に研究を進め、渡航が可能となった時点で迅速に現地調査に切り替えることができるよう、入念な事前調査を行なう予定である。国内についても現地調査の実施については慎重に判断し、可能な場合も細心の注意を払いつつ進める予定である。
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Causes of Carryover |
中国の陝西省および甘粛省にて現地調査を予定していたが、COVID-19の世界的流行を受け、実施することができなかった。そのため、旅費が当初の予定より大きく下回った。
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