2022 Fiscal Year Research-status Report
古代壁画の制作技法の伝習に関する研究-シルクロード近隣地域と日本の壁画を中心に
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19K13414
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
中田 愛乃 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (40813605)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 壁画 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、図版等を用いてあたり線の調査を行った。あたり線とは、色材をしみこませた糸を壁に向かって弾くことで印された直線である。 本年度の調査の対象としたのは、敦煌莫高窟にて唐の時代に制作されたとされている壁画である。 初唐に制作されたとされている壁画にて、水平方向ならびに垂直方向に赤褐色を呈するあたり線を観察した。周囲のモチーフとの位置関係から、画面を区切る、直線状のモチーフを描くための基準とする、同一直線状にモチーフをそろえることなどを目的として印されたものと推察される。いずれも後の工程の目安として印された可能性が高く、視覚的な効果は目的とされていなかったものとみられる。 盛唐から晩唐にかけて制作されたとされる壁画については、あたり線の存在を示すに至る痕跡を観察することができなかった。一部の壁画にて、直線状のモチーフの付近に黒色もしくは赤褐色を呈する直線を観察したが、糸を用いて印されたものなのか、筆を用いて引かれたものなのかを判断することはできなかった。また、部分的に色材の飛沫のような痕跡がみられたものの、糸を弾いた際に色材が飛び散ったものであるかは判然としない。 しかし、壁画には帯状のモチーフや、同一直線状に配置されたモチーフなどが描かれていることから、描画の際にはあたり線もしくはそれに類似する何らかの技法が用いられた可能性がある。これらを考察するためには、現地における詳細な観察が必要であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度はCOVID-19の感染拡大の影響により現地にて十分な調査を行うことが困難であると判断し、海外での調査を見送ってきた。そのため実物の壁画を詳細に観察することができなかった。 文献を用いた調査はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
海外渡航の制限が緩和されたことにより、海外での現地調査が可能になると予想されることから、2023年度は現地調査を行う。これまで文献の調査によって蓄積してきた資料をもとに、実物の壁画を観察する予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた海外調査を見送ったため、旅費の使用額が当初の予定を下回った。 本年度に見送った地域については次年度に調査を計画しており、これまでの未使用額については次年度の調査旅費として使用する予定である。
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