2019 Fiscal Year Research-status Report
蛍光X線スペクトル用いた黒曜石産地分析のための新規解析法の開発
Project/Area Number |
19K13417
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
三浦 麻衣子 帝京大学, 付置研究所, 研究員 (80771261)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 黒曜石 / 産地分析 / 蛍光X線分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は蛍光X線スペクトルを利用して、黒曜石の産地推定のための新規解析法を開発し、遺跡出土黒曜石製石器に対して新規解析法を適用することを研究目的としている。目的を達成するにあたり、1蛍光X線分析による原産地黒曜石データの検討、2蛍光X線スペクトルを用いた解析法の確立、3原産地黒曜石の定量分析結果からみた解析法の整合性の検証、4遺跡出土黒曜石製石器への活用、を実施する予定である。 2019年度は上記項目のうち、1と2の内容を中心に研究を行った。原産地黒曜石の蛍光X線分析は所属機関所有の可搬型蛍光X線分析装置を用いた。適正な蛍光X線スペクトルデータを得るために、同一試料の複数回測定による誤差、同一原産地内で採取された別固体試料の測定による産地内でのばらつき、適切な測定時間の検討を行った。また、得られたスペクトルに対して多変量解析の主成分分析によって解析を行った。解析の過程で蛍光X線スペクトルの中で原産地間に差が出やすいピーク位置が主要元素でケイ素、カリウム、カルシウム、鉄、微量元素でルビジウム、ストロンチウム、ジルコニウムであり、これら元素が黒曜石の産地分類に有効であることが客観的に明らかとなった。今後、ICP-OES、ICP-MSで今年度測定した原産地黒曜石を定量分析し、蛍光X線スペクトルデータとの比較、検証を行い、新規解析法を確立させる。 本研究では最終年度に遺跡出土黒曜石製石器に対して新規解析法を用いた産地推定を実施予定である。その基礎データの収集として今年度は東北地方を中心に遺跡出土黒曜石製石器の分析状況の把握と産地分析結果から黒曜石の流通について確認を行った。福島県については内陸域と沿岸部では利用している黒曜石産地が異なる傾向がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属での業務量が増え、十分に研究の時間を確保することができなかったため、予定していた原産地での黒曜石の産状を確認すること、蛍光X線分析結果の検証のために行う予定であったICP-OES、ICP-MSでの原産地黒曜石の分析をほとんど進めることができなかった。一方で、当初は予定していなかったが、新型コロナウイルスの影響により行動が制限される中で、最終年度に予定している遺跡出土黒曜石製石器の分析に向け所属機関所有の発掘調査報告書から東北地方の遺跡出土黒曜石の分析状況、産地分析結果の情報収集をすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の遺跡出土黒曜石製石器の分析に向け、2020年度中には解析法を確立させる。具体的にはICP-OES、ICP-MSによって2019年度に蛍光X線分析を行った試料と同一の原産地試料を定量分析し定量値を変数にして主成分分析を行い、蛍光X線スペクトルの主成分分析の結果との整合性を検討する。また、黒曜石原産地の調査も行う。今後の社会状況により、原産地調査が困難な場合には発掘調査報告書に掲載された遺跡出土黒曜石製石器の分析状況、産地分析結果の収集を積極的に行うことを検討している。
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Causes of Carryover |
所属での業務量の関係により黒曜石原産地の調査を予定通りに実施することができず、また解析用のパソコンを購入しなかったため、2019年度使用額が減少した。 2020年度は本研究の主目的である解析法の確立を本格的に実施するため、パソコンの購入を行う予定である。
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