2019 Fiscal Year Research-status Report
Preparation method and storage environment of the mammal specimens in Japan collected from the 1880s to the 1970s
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19K13429
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
下稲葉 さやか 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (00761545)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自然史標本 / 保存科学 / 哺乳類学 / 博物館学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、明治期から戦後にかけて作成された哺乳類標本の製法を文献等から明らかにし、使用された薬剤や化学物質を化学的手法で特定し、その結果から、健康被害を引き起こす有害物質の有無、保存・展示環境への影響を検討し、標本を安全に収蔵・管理・展示・研究できるようにすることを目的とする。今年度は、哺乳類標本の作成方法が記述されている文献から当時の製法や使用されている化学物質を調査し、調査対象の標本を選定し、予備実験を行う計画であった。文献調査に関しては、1889年~1953年にかけての15本の論文等を参照し、哺乳類等の標本作成や毛皮等の材料の保存、輸送に亜砒酸、ミョウバン、樟脳、ナフタレン、食塩等、少なくとも21種類が使用され、特に亜砒酸が多用されていたことが判明した。 予備実験と調査対象標本の選定に先立ち、保存科学を専門とする2機関に手法等を相談し、助言を得た。その助言にしたがい、本研究の具体的な目的の一つを、「どの時代の誰のコレクション・製法の標本群に、どの化学物質が使用されているかという傾向を明らかにすること」とした。そのため、調査対象とする標本は、標本の製作者、収蔵の経緯が明らかなことが必須となり、この条件を満たす国立科学博物館、千葉県立中央博物館に収蔵されている明治期から戦後に作成された標本群を選定した。今後の分析は、当初予定していた標本の表面の重金属を検出するための蛍光X線分析に加え、標本から揮発する化学物質を特定するためにガスクロマトグラフィーを追加して実施する計画に変更する予定である。そのため、調査手法を追加するための情報収集が必要となり、今年度は予備実験が実施できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の夏季に開催された企画展の展示主任だったため、展示会の撤収が終了する10月中旬まで、研究活動に時間が取れなかったため、研究に遅れが生じている。 博物館資料の保存科学の専門家と相談し、本研究への助言を得ることができた結果、研究計画を当初より変更することとした。具体的には、標本から揮発する化学物質の特定方法として、ガスクロマトグラフィーを新たに追加することとしたため、その手法に関する調査に時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の本研究の具体的な目的を、「どの時代の誰のコレクション・製法の標本群に、どの化学物質が使用されているかという傾向を明らかにすること」とする。これまでに選定した、国立科学博物館、千葉県立中央博物館に収蔵されている、明治期から戦後に作成された由来の判明している標本群を対象として、科学物質を特定する実験を開始する。まずは、蛍光X線分析を行い、標本の表面の亜砒酸等の重金属の有無を検出する予定である。加えて、嗅覚でも分かるような臭いを発するような化学物質が揮発している可能性の高い標本からは、ガスクロマトグラフィーを用いて化学物質を特定する予定である。研究計画を遂行するうえでの課題は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点により、他機関へ出張しての標本調査や調査用機材の借用が制限されている点、今年度に参加予定であった学会等が中止になり研究発表や意見交換の場がなくなった点である。そのため、一部の調査等に関しては、必要に応じて来年度以降も継続する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、蛍光X線分析装置を購入する予定であった。しかし、実際に使用する期間が短いことより、他機関の所有する装置を借用することとした。蛍光X線分析装置は高額な機器のため、その購入費用が必要なくなり、残額が生じた。 専門家の助言により、化学物質の特定方法として、次年度以降はガスクロマトグラフィーを実施する計画である。今年度の残額は、専門業者にガスクロマトグラフィーの実験作業を外注する費用として使用する計画である。
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