2019 Fiscal Year Research-status Report
同時多点位置観測から地すべり発生プロセスを解明する
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19K13432
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡邊 達也 北見工業大学, 工学部, 助教 (80636168)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地すべり / GNSS / 海岸侵食 |
Outline of Annual Research Achievements |
再活動型地すべりにおいて、すべりの発生段階ではすべり面の不均質性に起因する特有の挙動が存在すると考えられるが、従来の地すべり観測手法ではこの挙動の観測が困難であった。本研究では、低価格・高精度の衛星測位デバイスを使用した同時多点位置観測を実現し、地すべり発生メカニズムを解明することを目的とした。 現地観測は、北海道浜中町後静の海岸地すべりを対象に実施している。観測開始以降、2020年3月末までに4回の大変位イベントを捉えた。また多点位置観測によって、この地すべりでは大変位イベント発生の数ヶ月前から局所的かつ複雑な挙動を示す微小変動が断続的に発生し、やがてそれが全体へ波及、加速化し、大変位イベントに至ることが判明した。 複雑な微小変動は大変位イベント直後から発生しており、大地震後の余効変動のような挙動とみられる。その後、地すべりは安定するが、波浪侵食が進行すると末端部で微小変動が生じた。また、末端部が安定していても、移動体頭部から雨水・融雪水が流入すると上部で微小変動が生じた。初期の微小変動は変位方向が複雑であり、これはすべり面の不均質性や移動体が細かくブロック化していることに起因するとみられる。末端侵食が進行し、さらに降雨イベントが重なると、微小変動は全体に波及、加速化し、変位方向がほぼ同一になる。そして、無降雨期でも変動が継続する状態となり、そこに降雨/融雪と高波の両方あるいは一方が誘因となって大変位イベント発生に至る。大変位イベント発生直前は、末端部中央部付近が先行して加速していくが、一方で変位進行に遅れのある観測地点もあり、すべり面にはアスペリティのようにすべりを阻害する構造が存在すると推定される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
観測開始以降、当初の予想を上回る4回の大変位イベントが1年間に発生したことにより、地すべりの大変位発生メカニズムを解明するためのデータが十分に取得できた。現在、データ解析の途中であるが、国際誌への投稿準備を進めている。また、大変位イベントの繰り返しと活発な波浪侵食により、地すべり地内では急激な地形変化が進んでおり、海岸地すべりの活動から消失に至るまでの一連の地形変化プロセスを詳細に捉えられる見込みがある。これらのことから、研究は順調に進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在観測中の地すべりは、末端侵食により移動体が大幅に縮小していることから、今後の変動状況の様子を見ながら、観測の継続・終了を判断する。引き続き地すべりの動態観測を実施するために、新たな観測候補地の選定を進めていく。その際には、異なる地すべり発生メカニズムを捉えられるよう、現在観測中の地すべりとは発達段階、地形・地質条件が異なるものを選ぶよう留意する。 現在の観測システムは、1か月毎に現地でデータを回収して、後処理解析で位置座標を算出している。この方式では作業労力を要するため、次年度以降、遠隔操作でリアルタイムの測位データを確認できるシステムの構築を目指す。
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