2020 Fiscal Year Research-status Report
同時多点位置観測から地すべり発生プロセスを解明する
Project/Area Number |
19K13432
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡邊 達也 北見工業大学, 工学部, 助教 (80636168)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地すべり / GNSS |
Outline of Annual Research Achievements |
地すべり移動体の複雑な挙動を捉えるためには、多数の観測機器を密に配置することが望ましいが、従来の地すべり観測事例では実現されてこなかった。本研究では、地すべりの同時多点連続観測を実現するために、低コストの1周波GNSSモジュールを導入した観測システムを構築した。そして、海岸地すべりの挙動を捉えることを目的に、北海道浜中町後静海岸の地すべりを対象に観測を実施した。観測システムは、移動体上に10基(移動局)、不動域に1基(基準局)の計11基を設置し、地すべりの変動状況に応じて、観測システムの追加、移設を適宜実施した。搬送波データは1秒間隔で連続的にサンプリングし、月1回の頻度でデータ回収をした後、後処理解析で各観測地点の変位を算出した。 約2年の観測期間中、計5回の大滑動イベント(数時間で5~10m変位)が観測された。GNSS観測データを詳しく分析すると、移動体は大滑動イベント発生の数ヶ月前から微小変動を開始していた。微小変動開始直後の変位方向は一様ではなく、地すべり移動体内部の応力バランスやすべり面形状のの不均質性を反映したものと考えられる。その後、末端部での波浪侵食に起因する微小変動開始、そして微小変動の移動体全域への波及、加速化、変位方向の同一化を経た後、気象と海象の相互作用により最終的な大滑動イベントに至ることが明らかになった。 本研究では、多地点同時観測によって、地すべりが大滑動に至るまでの移動体の複雑な挙動を捉えられた。現在、同様のシステムを地すべり対策区域に導入して観測を実施しており、効果的な地すべり対策工事に寄与することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
観測対象地すべりでは、約2年間の観測期間中に大滑動イベントが計5回発生したため、地すべり変動の開始から停止までの一連のデータを十分に得ることができた。大滑動イベントの発生時期は融雪期、夏期、厳冬期と様々であるため、ワンパターンな季節的変動ではなく、それぞれのイベントで異なるプロセス・解釈が見込める。データ量が膨大であるため、詳細な解析に時間を要しているが、概略的な解析では期待していた結果が取得できている。また、観測対象地すべりは大滑動イベントと波浪侵食の繰り返しにより、現在はほぼ消失した状態にあり、観測システムは既に撤去した。海岸地すべりが消失するまでの連続データを取得できたのも貴重であり、移動体の形状変化に伴う移動体変動特性の変化も見ることが可能であると考えている。これらのことから、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの観測で得られたデータの詳細な解析を早急に進め、学術雑誌への投稿を行う。また、同様の観測システムを地すべり対策区域に展開し、地すべり防止対策への貢献を推進していく。
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