南九州カルデラ地域の前-中期更新世火砕流堆積物の層序と爆発的火山噴火史の解明

2023 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 19K13438
• Research Institution: Kanagawa Prefectural Museum of Natural History
• Principal Investigator: 西澤 文勝 神奈川県立生命の星・地球博物館, 企画情報部, 学芸員 (70813905)
• Project Period (FY): 2019-04-01 – 2025-03-31
• Keywords: 火砕流堆積物 / 南九州 / 前-中期更新世 / 火山ガラス / 化学組成

Outline of Annual Research Achievements

鹿児島湾沿岸地域に分布する前-中期更新世火砕流堆積物の層序・分布の解明を目的とし、鹿児島県屋久島町における野外調査を実施した。屋久島町小瀬田において、広域的に知られる火山灰層の対比候補とみられる火山近傍の中期更新世火砕流堆積物の層相を記載し、火山灰分析に用いる試料のサンプリングを実施した。当該サンプルは、風化が進んでいるために火山ガラスの含有率が低いことから、双眼実体顕微鏡による観察時にピッキングを行い、火山ガラスのみを純化する作業を行なった。屋久島町安房における試料については、風化により火山ガラスが消失しており、火山ガラスの主成分化学組成の比較検討に用いることができないことを確認した。
また、熊本県八代市二見本町において、鹿児島地溝帯に位置する複数のカルデラからそれぞれ噴出したとみられる３枚の中期更新世火砕流堆積物を観察し、模式試料を採取した後、火山ガラスの主成分化学組成の分析前処理を実施した。これまでに処理が未完了だった模試的分布地における火砕流堆積物の試料について、同様の分析前処理を実施し、測定に移行する準備を進めた。主成分化学組成の取得が済んだ試料については、既知データとの比較を行った。
本年度、新たに予定していた火山ガラスの主成分化学組成の分析については、予定する期間に、データの取得を完了することができなかった。
今後は、これまで収集した火砕流堆積物・降下火砕堆積物に絞って、双眼実体顕微鏡によるテフラの構成粒子の観察および火山ガラスの主成分化学分析を実施する。

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

採取した試料の中には、火山ガラスの抽出を含む分析前処理に時間がかかるものがあり、予定期間に記載岩石学的特性のデータ取得を実施できなかった。そのため、前年度までの進捗状況の遅れを取り戻すほどには結果が得られず、現在の進捗状況を(4)とした。

Strategy for Future Research Activity

これまでに採取できた試料の分析を重点的に行い、データの取得を急ぐ。また、得られた記載岩石学的特性をまとめ、南九州に分布する火砕流堆積物と降下火砕物の火山ガラス主成分化学組成を比較しその違いを可視化する。記載岩石学的に対比が見込まれるものについては、屋久島町および宮崎県東部の四家層中に確認している複数の降下火砕堆積物を中心に検討する。

Causes of Carryover

複数回の出張をともなう室内分析を計画していたが、今年度は分析前処理に時間を要し、予定の回数を実施できなかった。そのため、次年度に繰り越すこととなった。これらの研究経費については、本年度の野外調査・分析のための旅費および試料管理・分析とその解釈に必須の物品費に使用する計画である。