2019 Fiscal Year Research-status Report
Developing and verifying a spatiotemporal socio-ecological approach towards a society in harmony with nature
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19K13440
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉田 有紀 広島大学, 社会科学研究科, 助教 (00824765)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 価値観 / メタ分析 / 国際比較 / 比較文化学 / 福利 / 自然観 / values / wellbeing |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は自然環境・社会環境・人間の心理プロセスや行動傾向の相互依存関係について、空間的差異と適応過程のメカニズムを明らかにすることであった。すなわち、人間が自然や社会環境とどのように影響し合っているのかを、国際比較および時系列的比較をとおして明らかにすることを試みる。具体的には、関連研究のⅠメタ分析、それによるⅡ国際的空間比較分析、そしてフィールド調査を交えたⅢ長期的時系列分析やⅣ近代移民による自然環境や社会環境への心理的適応過程の検証、最終的にはⅤ自然共生社会の構築に向けた戦略提言を計画している。これに対し、初年度にはⅠからⅢの文献レビューや二次データの蓄積、ⅢやⅣのフィールド調査に向けた現地連絡を計画、実施してきた。また、Ⅴ自然共生社会の構築に対する直接的な知見として期待される社会の将来像に関する国際共同研究も進めてきた。
具体的には、これまで蓄積されてきた、自然環境・社会環境・人間の心理プロセスや行動傾向の相互依存関係に関する様々な学術分野の文献を整理してきた。それらの結果をデータベース化することで、総合的なメタ分析や、二次データによる分析を可能にするためである。また、人間の心理的特徴や心理プロセスと、自然環境や健康、福利に影響する行動の関連に関する実証的研究を行っている。中でも健康行動に関しては、自治体レベルでの取り組みと連携した共同研究を進めてきた。同時に、自然共生社会の構築に向けた戦略提言に寄与すべく、人間社会と自然環境の将来シナリオに関する国際共同研究にも取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のとおり、ⅠからⅢの研究課題は順調に進行していたもの、新型コロナに関連した社会情勢や規制により、計画途中であったⅡやⅢの予備調査は延期され、渡航の見通しもついていない。他方、4年目に計画していたⅤ自然共生社会の構築に向けた戦略提言に関しては、想定以上に進展している。研究代表者は、本課題への申請段階で生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(Intergovernmental Panel for Biodiversity and Ecosystem Services; IPBES)における「自然とその恵みに関する多様な価値観の概念化に関する方法論的評価」の主執筆者(Lead Author; LA)として選抜されていたが、具体的な担当内容は2018年11年の第1回執筆者会合以降まで未定であった。以来、価値概念という観点から、人間社会と自然環境、自然の恵みに関する将来シナリオを調査してきた。本年には第2回執筆者会合(2019年10月メキシコにて開催)に参加し、選出基準を満たした学術文献の特定とコーディング、そのさらなる展開を議論した。その一環として、芸術作品やグレー・リタレチャーといった、従来、関連分野では対象にされてこなかった媒介物をレビューするための方法論も開発した。これらの活動をとおし、自然共生社会構築に関連する価値観を特定することは、想定以上に本研究の最終目的に寄与するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目には、これまでの研究成果の国際学術誌への投稿に加え、構築したデータベースを利用したⅡ国際的空間比較分析、そして現地調査を用いたⅢ長期的時系列分析、Ⅳ近代移民の心理状況の調査への着手を計画していた。計画では、研究対象地への現地調査を本格的に始める予定であったが、新型ウィルス関連の社会情勢により、国際移動や対人調査の見通しがつかない状態が今後も想定される。よって、これらの遂行が不可能であり続けたことを想定した推進方策を提示する。
二次データのみ用いるⅠとⅡの計画は問題ない。ⅢやⅣも、二次データの統計分析部分は計画通りの推進が見込める。Ⅲのうち、対象国における歴代移民の適応過程を把握するためのドキュメント調査は、本国からも閲覧・入手可能な、デジタル化された資料を用いた実施を見込める。これらの分析結果を補足すべく計画していた現地調査に関しては、ウェブ上などの現地に関する情報を収集しつつ、視察が可能になるまで延期することとなる。独自調査にもっとも依存するのはⅣ近代移民に関する調査である。2年目に計画していた、対面型フォーカスグループやディスカッションは延期し、3年目に計画していた質問紙調査の準備に取り掛かる。この質問紙調査のターゲット層は複数世代の移民であるため、ウェブアンケートへのアクセスは必ずしも備わっていない。幸い、オーストラリア国内での経済活動は現時点で再開しつつあるので、現地の業者をとおしての質問紙調査を検討する。現地調査の結果を質問紙調査の設計に反映する当初の計画とは異なるが、反対に質問紙調査の結果を踏まえてフォーカスグループなどを設計することで、2つの手法の相互補完的な役割は変わらない。
なお、2年目中と想定していた、IPBES執筆者会合の開催日程は2021年4月以降になる見込みであるが、自然や社会の将来像における自然観や価値観の国際共同研究は継続する。
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Causes of Carryover |
適切な施行を行い、端数の次年度使用額が生じた。令和2年度予算と物品購入(パソコンまたは周辺機器)に使用する。
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