2019 Fiscal Year Research-status Report
Categorizing villages in Southern Vietnam by compiling and visualizing modern and contemporary historical materials using GIS
Project/Area Number |
19K13441
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澁谷 由紀 東京大学, 附属図書館, 特任研究員 (90821976)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 公田・公土 / 地簿 / 地図 / コーチシナ / ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
第一次・第二次インドシナ戦争はベトナム南部問題が焦点であったため、ベトナム南部農村史の理解はベトナム近現代史の重要な課題である。しかしこれまでの研究ではベトナム全体の南部⇔北部やメコンデルタのハウザン河以西⇔以東というマクロなレベルに分析の視点が置かれたため、1930年代初頭のメコンデルタ農民蜂起や第二次インドシナ戦争中の解放勢力の優勢が、なぜ当該地域で発生したのかという重要な問題を十分に説明することができなかった。 本研究は、(1)伝統王朝期の田土・物産情報、仏領期初期からベトナム共和国期の公田・公土(村落共有田・畑)に関する情報、仏領期中期の国有地払い下げ・土地売買に関する情報、第二次インドシナ戦争中の村落評価情報といった各時代の土地に関する情報を計量化し緯度・経度を確定させ、(2)そのうえで、GISを利用してこれらの情報を地図上にプロットして可視化し、その分布を比較・分析し、(3)これらの作業を通じてベトナム南部農村の体系的かつ多様な類型化を試みることを目的としている。 1年目である本年は、伝統王朝期と仏領期について、資料中に記された自然環境や土地利用状況、歴史事象の発生場所を可視化する作業を行った。具体的にはベトナム国家文書館第1分館において収集した『明命17(1836)年地簿』地簿の複写の一部(嘉定省新平府平陽縣平治中總(仏領期のサイゴン市に相当・314 葉)を資料に、各村の東西南北の村落名と1909年に発行された地図帳の地名の比較作業や田土の計算作業を行った。また、ベトナム国家文書館第2分館において収集した公田・公土関係ファイルのリスト(公田資料216ファイル等)をもとに、位置情報(緯度・経度)を確定させる作業を行った。 これらの作業と同時に、公田・公土を中心としたベトナム南部土地制度史に関する内外の文献の基礎的なサーベイを行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1年目となる本年度は、ベトナム国家文書館第1分館において『明命17(1836)年地簿』地簿の複写を入手し、得られた田土の情報を計量化したうえでそれぞれの情報に対して位置情報(緯度・経度)を確定させる作業を実施予定であった。しかしながら、新型コロナウィルスにより予定された時期に渡航が困難となり、結果として本年度はベトナム国家文書館第1分館の訪問ができなかった。 そのため、2018年3月に同館から入手済みであった一部の地簿(嘉定省新平府平陽縣平治中總(仏領期のサイゴン市に相当)の複写314 葉を使用し、各村の東西南北の村落名と1909年に発行された地図帳をもとに位置情報を確定する作業や田土の計算作業を実施した。 一方、計画実施計画では2年目にベトナム国家文書館第2分館で調査を行い、所蔵されているコーチシナ知事コレクション(Goucoch.)の公田・公土資料を新たに収集し、公田・公土の分布情報の分析を行う予定であった。申請時の計画にはなかったが、1年目である本年度にベトナム国家文書館第2分館の訪問できたため、コーチシナ知事コレクション等に含まれる公田資料216ファイル、公土資料18ファイルのリストアップ作業を行った。現在は村名を手掛かりに、公田・公土の時代ごとの分布情報を分析している。 以上、1年目の課題である伝統王朝期の分析は一部のみ達成ができたが、2年目以降の課題である仏領期の分析には期せずして着手することができた。本年度に限れば進捗状況はやや遅れているが、計画以上に研究が進展している面もあり、総合的にみればおおむね順調といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
日本・ベトナム両国間の出入国制限については諸外国に比べ早期に緩和される見込みであるが、引き続き渡航制限が続いた場合には日本国内で可能な作業を先行させることで対応する。具体的には下記の(1)(2)(3)の通り対応する。 (1)1年目に実施予定であった嘉定省新平府平陽縣平治中總以外の地簿については、地簿掲載の一部情報について、Nguyen Dinh Dauによる現代ベトナム語訳が公刊されている。したがって暫定的に二次文献に依拠し研究を進める。(2)2年目に実施予定の漢文・ベトナム語官報『嘉定報』(マイクロフィルム版・日本国内所蔵)記載土地売買情報の分析を行う。(3)3年目に行う予定であった第二次インドシナ戦争中のHES(Hamlet Evaluation Survey)資料(日本国内所蔵)の分析に着手する。
|
Causes of Carryover |
1年目に購入予定であった物品(ノートパソコン)の購入を見送った。また、新型コロナウィルスの影響により予定していた海外調査の一部が未実施となった。物品については次年度に購入予定である。海外調査についても可能な状況になり次第実施予定である。
|