2023 Fiscal Year Annual Research Report
フランス参加型ウルバニズムに関する地理学的研究:社会連帯経済の空間性
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19K13445
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
立見 夏希 (川口夏希) 鳥取大学, 地域学部, 講師 (80647834)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 参加型都市計画 / 社会連帯経済 / 脱工業化 / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2000年代以降、フランスで活発に展開する「社会連帯経済(ESS)」運動の文脈を踏まえて、都市社会地理学分野の今日的争点である、新自由主義に還元されないオルタナティブな空間形成のあり方を展望するものである。①参加型の空間構築、②ESS運動に呼応した都市再生政策、都市計画、建築家の実践への着目、③フランスの都市計画の文脈との接合を論点としている。 2023年度は、4月初頭(前年度の2023年3月末から)フランス現地調査を行なった。リール地域を拠点とするESSの支援組織であるAPESへのインタビュー、旧工業地域・ユニオン地区のフィールドワークを行なった。また、グランパリ構想やオリンピック開催、住宅不足との関連で空間整備が進展するパリ郊外の旧工業地域のフィールドワークを行なった。フランスESS運動を取り巻く政治・経済・地理的状況の変化が明らかとなった。加えて、フランス研究と並行して進めてきた兵庫県・丹波篠山地域の住民参加型のリノベーションと地域再生の展開に関する調査を継続して行い、下記の論考にまとめている。川口夏希(2023)「ルーラル・ジェントリフィケーションの分岐点を考える : 兵庫県丹波篠山市の経験から」都市問題, 114(12),pp.72-80. リール地域の実践においても、丹波篠山地域の実践においても、旧工業地域や衰退地域のリノベーション・プロジェクトではコモンズの生産が目指されているものの、その背景には相違が見られた。リール地域の場合、ESS運動の広がり、地域の住民参加の系譜、建築家の理念や実践に下支えされているのに対して、丹波篠山市・集落丸山では、フランスとは異なる地縁的な繋がりや豊穣化の経済の進展を背景としている点に特徴が見られた。
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