2021 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の植民地における商工業者ネットワークの歴史地理学的研究
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19K13449
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
網島 聖 佛教大学, 歴史学部, 准教授 (70760130)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 産業化 / 産業地域 / 商工業者ネットワーク / 売薬 / 同業組合 / 外地 / 満州 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度においては近代日本のいわゆる外地における商工業者ネットワークを分析することを目的に、明治30年代から昭和10年代の売薬業を中心とする医薬品産業のいわゆる満州への進出を事例にとりあげ、①日本国内(内地)における地場産業としての売薬業の発展と満州への進出を検証すること、および②本研究課題の成果を西欧先進産業化国(特にイギリス)の事例と比較し、後発産業化国のモデルとしてグローバルな産業化の歴史に位置付け、研究成果の国際発信を行なった。 ①については製薬企業の社史記述により当時の状況を確認したのち、満州薬剤師会会報「満洲薬報」昭和12年1月号から14年12月号の内容を分析し、1930年代後半から1940年代前半の満州に見られた中小零細規模の業者を含む日系医薬品業者の活動とそのネットワークを解明、分析した。その結果、業者が根拠地とする都市の特徴や同業者団体の性質により現地での営業形態や活動範囲の類型が異なることが明らかになった。また、特に奉天では既存業者が権益擁護のため新規参入業者の制限を行おうとしたことや、現地で新規事業者を育成することによりもたらされる矛盾を域外の華北地域などに転じようとしていたことなどを確認した。 ②については研究期間全体を通じて明らかになった満州および華北地域への日系医薬品業者の進出とそのネットワークの実態についてまとめて国際学術会議にて口頭発表し、国際的な開発経済の議論との接点を求める討論を行なった。 以上より、植民地への進出時に注目した産業化と地域形成の検討においては、業者の前に立ちはだかる領域的な取引や規制の制度が重要な意味を持っていることに注意し、進出した業者による領域的な制度改変への欲望やそれによる矛盾の解消といった側面の検討がさらに必要となることが示された。
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