2020 Fiscal Year Research-status Report
「地域の文脈」モデルを用いた歴史災害研究の提案―昭和戦前期の都市水害を事例に―
Project/Area Number |
19K13450
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
谷端 郷 北海学園大学, 人文学部, 講師 (70817444)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 都市水害 / 昭和戦前期 / 地域の文脈 / 尼崎 / 京都 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は昭和戦前期の都市化地域における水害の実態を、都市化という「地域の文脈」の中に位置づけて考察することを目的とする。災害やその対策の問題は「地域の文脈」に依存するがゆえに、場合によっては水害後の対応がかえってその後の被害を悪化させる事態をも招きうる。このような点について、災害の要因を「地域の文脈」の中に位置づけることによって、災害対応が不十分となる背景の理解が可能となる。また、これまでほとんど着目されてこなかった1930年代の都市水害の実態解明を通して、従来の都市水害の歴史的展開を見直すことも意図している。 今年度はア)まず「地域の文脈」モデルを提示するための枠組みの構築と、イ)事例研究のための資料収集・整理に取り組んだ。ア)に関しては、これまで博士論文で行った1930年代の京都市、大阪市、神戸市における都市水害の事例研究をベースに、当時の都市水害の発生原理とその要因を図式的に整理した。この件に関しては論文を概ね書き上げ、次年度前期中に学会誌への投稿を目指したい。イ)に関しては昭和9年室戸台風で被害を受けた尼崎に関する事例研究(事例①)と昭和戦前期京都市の都市化と水害に関する事例(事例②)とに分かれる。事例①については今年度現地調査を行えず、新規の資料収集はほとんどないが、これまでに収集した資料を用いて昭和9年室戸台風時の尼崎市とその周辺町村の被害実態について整理をほぼ終えた。事例②については、新たに発見された昭和 10年の水害に関する被害図を所蔵元の立命館大学歴史都市防災研究所で閲覧する機会を得た。コロナ禍により次年度新たな資料収集等の目途は立てられないが、今年度に収集したこれらの資料を基に当時の災害実態を解明する研究の学会発表と学会誌への論文投稿を行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度前半で「地域の文脈」モデルの基礎となる昭和戦前期の都市水害の整理・分析、後半で事例研究①と②に関する資料収集を予定していた。前者については論文を執筆中であり順調に進められた。しかし後者についてはコロナ禍の影響で調査が行えず、資料収集は当初の予定通りにできなかった。ただ、これまでに収集した資料によって事例①、事例②とも災害実態の復原を行うことはできることから、研究の進捗状況への影響は限定的であり、全体としては「やや遅れている」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度前期中に昭和戦前期の都市水害を整理・分析した論文を学会誌に投稿したい。また、今年度の後半で事例①の室戸台風による尼崎の被害実態に関する研究の学会発表ならびに論文投稿を行いたい。また、事例②に関連して、新たに発見された昭和10年京都大水害に関する被害図の分析結果についても学会発表や論文投稿を行う予定である。さらに、事例①②に関する資料収集についてはコロナ禍の状況次第にはなるが、機会をもちたい。
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Causes of Carryover |
今年度前期中に昭和戦前期の都市水害を整理・分析した論文を学会誌に投稿したい。また、今年度の後半で事例①の室戸台風による尼崎の被害実態に関する研究の学会発表ならびに論文投稿を行いたい。また、事例②に関連して、新たに発見された昭和10年京都大水害に関する被害図の分析結果についても学会発表や論文投稿を行う予定である。さらに、事例①②に関する資料収集についてはコロナ禍の状況次第にはなるが、機会をもちたい。
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Research Products
(1 results)