2020 Fiscal Year Research-status Report
An Anthropological Study of Religions and Mobilities: Transnational Muslim Networks in Contemporary China
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19K13454
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
奈良 雅史 国立民族学博物館, 超域フィールド科学研究部, 准教授 (10737000)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 宗教 / 移動 / イスラーム / 中国 / ムスリム / 回族 / モビリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中国内陸部から中国沿岸部にアラビア語通訳として出稼ぎに行く回族と呼ばれるムスリム・マイノリティの動きに焦点を当て、中国政府による「一帯一路」構想の推進に伴う中国とイスラーム諸国との間での経済交流の促進が人々の移動の活発化をもたし、イスラーム復興を促進してきたプロセスを明らかにし、宗教とモビリティをめぐる理論的モデルを提示することである。 当該研究目的を達成するために、2020年度、報告者は、イスラーム諸国からの商人と中国国内のムスリムの出稼ぎ労働者が多く集まる国際商業都市である中国浙江省義烏市およびムスリム出稼ぎ労働者の主要な出身地のひとつである中国雲南省昭通市におけるフィールドワークの準備を進めてきた。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響にその実施が困難となった。そのため、2020年度はこれまでの現地調査で得られてたデータの分析と、その発表を進めた。 国際貿易都市として発展するに従って、義烏市は中国の内外から多くのムスリムが集まる場所となってきた。既往研究では、義烏市に集まる国内外のムスリムに焦点を当て、彼らがイスラーム信仰に基づくトランスナショナルなムスリム・コミュニティを形成してきたと論じられてきた。しかし、本研究から明らかになったのは、義烏市に暮らすムスリムたちが凝集性の高いムスリム・コミュニティを必ずしも形成しないということである。それには中国政府による宗教政策の影響、ならびに多くのムスリムにとって義烏市にやってくる一義的な目的が経済活動にあることが関係している。こうした状況を踏まえ、本研究では中国ムスリムたちが出自の異なる人びとと必ずしも積極的に関わらない、あるいは関わらなくても良い状況が他者との共在を可能にするうえで積極的な意味を持ちうることを検討してきた。その成果は日本語論文などとして発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画は、やや遅れているといえる。当該年度は日本語の共編著1冊、日本語の論集への分担執筆4本を出版し、研究発表を4回行った。そのため、研究成果の発表という点では一定の進捗があった。しかし、その一方で、以下の2点において当初の研究計画通りに研究を進められなかった。第一に、新型コロナウイルス感染の拡大に伴い、発表を予定していた国際学会が延期や中止したことにより、研究成果の国際化を十分に進めることができなかった。第二に、同様の理由から当該年度に予定されていた現地調査を実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症をめぐる状況が改善し次第、当該年度に実施できなかった現地調査を実施する予定である。そのために調査地の人びとに連絡をとり、現地の情報の収集に努めている。また、2020年度は日本国内における研究成果の公開は一定程度進められた一方で、新型コロナウイルス感染症の影響に国外での研究成果を発表することができなかった。従って、今後は国際学会や国際学術雑誌での研究成果の公開を進めていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、2020年8月、9月、および2021年2月、3月に予定していた中国におけるフィールドワークが新型コロナウイルス感染症の影響により、実施できなくなったためである。2021年度に状況が改善し次第、当該予算は当初予定していたフィールドワークを実施することで使用する。
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