2022 Fiscal Year Research-status Report
An Anthropological Study of Religions and Mobilities: Transnational Muslim Networks in Contemporary China
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19K13454
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
奈良 雅史 国立民族学博物館, 超域フィールド科学研究部, 准教授 (10737000)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 宗教 / 移動 / イスラーム / 中国 / ムスリム / 回族 / モビリティ / 台湾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中国内陸部から中国沿岸部にアラビア語通訳として出稼ぎに行く回族と呼ばれるムスリム・マイノリティの動きに焦点を当て、中国政府による「一帯一路」構想の推進に伴う中国とイスラーム諸国との間での経済交流の促進が人々の移動の活発化をもたし、イスラーム復興を促進してきたプロセスを明らかにし、宗教とモビリティをめぐる理論的モデルを提示することである。 2022年度も昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により中国大陸における現地調査の実施が困難であったため、報告者は研究目的を達成するために、これまでの現地調査で得られたデータの分析とその発表を進めた。国際貿易都市として発展してきた義烏市におけるイスラーム用品をめぐるヒト、モノの多民族的・多宗教的ネットワークのあり方を検討し、その成果を国際シンポジウムにおいて発表した。また、中国においてムスリムのモビリティの高まりによるトランスナショナルなムスリム・ネットワークの形成により、中国大陸における回族のあいだでの教派間関係がいかに変化してきたのかについて検討し、その成果を国際ワークショップにおいて発表した。これらの口頭発表の成果を英語論文として国際学術雑誌に投稿すべき、執筆を進めている。 加えて、上記の研究目的を達成するための比較研究として、近年インドネシアをはじめとする東南アジアからのムスリム労働者が増加する台湾におけるムスリム・コミュニティを焦点を当てて、中華系ムスリムがいかに増加する外国人ムスリムたちを包摂してきたのかについて、モスクにおける対応などを中心に現地調査を実施した。その成果を踏まえて、学会発表および学会誌への論文投稿をすべく準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画は、やや遅れているといえる。当該年度は日本語の分担執筆2冊を出版し、国内外の学会やシンポジウム、研究会で研究発表を11回行った。そのため、研究成果の発表という点では一定の進捗があった。ただし、新型コロナウイルス感染の拡大に伴い、当該年度に予定されていた現地調査を十分に実施することができなかった。そのため、これまでの調査データの分析、文献資料の分析により、研究を進めたものの、当初予定よりは研究計画は遅れている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症をめぐる状況が改善したため、当該年度に実施できなかった現地調査を次年度に実施する予定である。そのために調査地の人びとに連絡をとり、現地の情報の収集に努めている。ただし、中国大陸においては現地調査が困難な状況も想定されるため、その場合は台湾を中心に現地調査を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルス感染症の影響により、当初対面での参加を予定していた国際学会や国内学会および研究会がオンラインで開催されたこと、ならびに当初実施を予定していた中国大陸における現地調査が実施できなかったためである。現在、世界的に入国制限の緩和が進められているため、次年度に今年度実施ができなかった分もあわせて現地調査を実施するための準備を進めている。
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