2020 Fiscal Year Research-status Report
現代アフリカの国家統治:ケニアの人獣共通感染症対策を事例として
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19K13457
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
楠 和樹 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特任助教 (90761213)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アフリカ国家 / 動物疾病 / 統治性 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度はカジァド・カウンティをフィールドとして、ケニア共和国のリフトバレー熱対策の現状について現地調査をおこなった。それに対して今年度は、この感染症に取り組む体制が歴史的に形成される過程を再構築する作業の一環として、20世紀初頭から1960年代までのケニアの獣医行政に関する歴史資料を分析した。ケニアの獣医行政はもともと入植白人が所有する家畜の保護と改良を目的として始まったもので、戦間期以降は変化が見られたものの、植民地期を通じてアフリカ人の居住地域に配分されるリソースは限られていた。第二次世界大戦後のイギリスの植民地政策の転換はこの点で重要な分水嶺であり、獣医行政の組織化と拡充が進められ、開発計画におけるその役割が強調された。しかし、リフトバレー熱は牛疫やトリパノソーマ症などの動物感染症と比較して頻度も経済的な損失も深刻ではなく、流行の範囲も限られていたことから、この時期になっても科学的研究や積極的な対策の対象に含まれなかった。他方で、第二次世界大戦後とはIBED(アフリカ動物感染症局;現在のAU―IBAR(アフリカ連合・動物資源局))を中心に動物感染症に対する国際的な技術援助の枠組みが整備されはじめた時期でもあった。そして、この枠組みはのちにリフトバレー熱を動物だけでなく人間の健康にとってもリスクとして認識し、グローバルヘルスの課題として取り組んでいく体制の下地を用意することになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度はケニア、イギリス、イタリアにおける資料収集とインタビュー調査を予定していたが、新型コロナウイルスの流行の継続と個人的な理由のため、断念せざるを得なかった。そこで、当初の計画を変更し、今年度は2019年度にケニアとイギリスで収集した資料の整理と分析に集中した。また、イギリスについては調査を予定していた国立公文書館が電子化されたアーカイブの一部をオンラインで提供しはじめたことで、入手可能な範囲で必要な史料を収集、分析することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、渡航が可能な状況になり次第、ケニアでの現地調査をおこなう予定である。また、それが難しければ現地の調査補助会社を通じて資料収集をおこなうことも検討している。
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Causes of Carryover |
2020年度はケニアとヨーロッパでの調査を計画していたものの、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行のために実施することができなかった。2021年度は渡航が可能な状況になり次第、延期していた現地調査をおこなう予定である。
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