2021 Fiscal Year Research-status Report
現代アフリカの国家統治:ケニアの人獣共通感染症対策を事例として
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19K13457
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
楠 和樹 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特任助教 (90761213)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アフリカ国家 / 動物疾病 / 統治性 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度はケニアに渡航し、カジァド・カウンティでの現地調査をおこなうことを予定していたが、新型コロナウイルスの流行が続いていたためこれを断念し、令和元年~2年度にかけてケニア国立公文書館、アフリカ連合動物資源局(African Union Inter-African Bureau for Animal Resources)で収集した歴史資料の分析をおこなった。この作業ではとくに、人獣共通感染症がグローバルヘルスの課題として前景化されていくプロセスを明らかにすることを試みた。アフリカの他の国々と同様に、ケニアの家畜感染症対策は歴史的に牛疫やトリパノソーマ症など、感染性が強く致死率の高い感染症をおもな対象としてきた。そのため、リフトバレー熱のようなローカルな人獣共通感染症の存在は知られていたものの、頻度も経済的な損失も深刻ではなかったことからその対策や科学研究は進まなかった。しかし、第二次世界大戦後に国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization)や動物資源局などの国際機関のイニシアティブで人間のみならず動物の感染症をターゲットとした国際的な技術援助の体制が構築されるにつれて、この状況に変化が生じた。現在のケニアの人獣共通感染症対策は近年になって突如として整備されたものではなく、植民地後期以降徐々に構築されてきたグローバルな体制として位置づけられるものである。 以上の研究の成果の一部は、5月に開催された日本アフリカ学会の学術大会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していたケニアへの渡航を実施できず、これまでに収集した資料の整理と分析に切り替えるという対応をとった。研究計画の中核をなす現地調査がおこなえないことで進捗にやや遅れが出ている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は感染状況に改善が見られるため、予定通りケニアで現地調査をおこなう予定である。ただし、先行きは不透明な状況であり、現地の調査補助会社に部分的なデータ収集を依頼するなど、状況の変化に柔軟に対応しながら研究を進めていく考えである。
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Causes of Carryover |
令和3年度はケニアとヨーロッパでの調査を計画していたものの、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行のために実施することができなかった。令和4年度は渡航が可能な状況になり次第、延期していた現地調査をおこなう予定である。
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