2019 Fiscal Year Research-status Report
近現代インドにおける清掃人カースト・コミュニティーの変容に関する歴史人類学的研究
Project/Area Number |
19K13459
|
Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
増木 優衣 大東文化大学, 国際関係学部, 研究員 (80828442)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | インド / 公衆衛生 / サニテーション / ダリト / 文化人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、インドにおける被差別民(ダリト)である清掃カースト・コミュニティーについて、植民地期から現代にいたるまで、彼らが「トイレ掃除」を含む清掃という職業とどのように関わってきたのかについて理解するため、史料収集と現地調査の2つを行った。前者については、調査地であるインド北西部のラージャスターン地域の植民地期の公衆衛生の状態、特に下水道設備の実態についての史料の収集を行った。また、これに対して、植民地期インドの都市部における公衆衛生状態の概要を把握するため、ボンベイ管区を対象とした史料の収集を行った。これにより、19世紀後半から20世紀前半のインドにおいて、実際にどのような屎尿処理技術が導入されていたのかを明らかにできた。 現地調査については、調査地における清掃カースト・コミュニティーの慣行的な権利や文化的な実践について理解するため、オーラル・ヒストリーの収集を行った。これにより、ローカルなレベルで屎尿処理や信仰実践がどのように行われてきたのかについて概要を把握することができた。それと同時に、インド独立以降の同地域の公衆衛生の普及状況に関して理解するため、自治体の清掃部門関係者などに対して聞き取り調査を行った。また、インドの大都市の自治体の清掃部門における労働内容について把握するため、ムンバイの清掃労働組合や清掃労働従事者に対して、簡単な聞き取り調査を行った。これにより、清掃労働とカーストをめぐる問題等について部分的に明らかにできた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査状況についてはほぼ計画通りに進展しているものの、研究成果の発表については以下の理由により、進展に遅れが見られたため、区分(3)を選択した。すなわち、インドにおける国際会議で研究成果の発表を予定していたが、デリー市内における「市民権法改正法」に反対する抗議活動の展開や、治安当局との衝突など、治安の悪化が収束する見込みがなかったため、安全面から渡航を断念せざるを得なくなったためである。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初、2020年度には、最低でも約3か月間の史料収集・フィールドワークを予定していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大により、インドもロックダウン下にあったことや、ロックダウン緩和後も、感染状況は改善せず極めて悪化していることから、本年度のインド渡航が危ぶまれている。そのため、インドを訪れての調査は難しい可能性が高く、本年度は、前年度までの調査で得られた知見から、日本国内において研究成果の発信を中心に行っていくことになると思われる。
|
Causes of Carryover |
購入予定であった書籍が入手困難となったため物品費が当初の予定よりも少なくなったこと、また、インド渡航時の宿泊先の変更により、その分の旅費が少なくなったことにより、次年度使用額が生じた。そのため、次年度の研究のための書籍代や、研究成果発表の際の論文校閲費等に使用する予定である。
|