2021 Fiscal Year Research-status Report
近現代インドにおける清掃人カースト・コミュニティーの変容に関する歴史人類学的研究
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19K13459
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
増木 優衣 大東文化大学, 研究推進室, 研究員 (80828442)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インド / 清掃人カースト / サニテーション / ダリト / トイレ / NGO |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(2021年度)は、インドにおける被差別民(ダリト)である清掃人カースト・コミュニティーについて、とりわけ彼らの解放運動に携わる主体に焦点を当て、その詳細に関して検討を行った。前年度に引き続き、インドにおける新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、現地調査を通じた新たな史料収集、およびフィールドワークによるデータ収集の双方とも断念せざるを得なかった。そのため、研究実施方法は、前年度までにインドで収集した史料やデータの分析、日本国内で入手可能な文献のレビューに限定された。研究成果は次の2つである。 ①現代インドにおいて、水洗トイレの普及という屎尿処理技術の革新を通じて、清掃人カーストの人々の「解放」を目指すインド国内の非政府組織(NGO)の活動に着目し、彼らの清掃人カースト差別に対する認識について明らかにした。具体的には、インドの首都ニューデリーにある「トイレ博物館(Museum of Toilets)」の展示品を分析することで、NGOがインドの公衆衛生問題やカースト差別問題についてどのような言説を構築し、外部に発信しようと試みているのか、そして清掃人カーストの「解放」に対する彼らの認識と立場がもつ限界とは何かを明らかにした日本語論文を投稿・発表した。 ②インド独立以降の清掃人カーストと清掃労働(サニテーション労働)との関連について、前年度に執筆した、清掃人カースト「解放」の試みに焦点を当てた英語論文の最終校正・発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度に引き続き、研究成果の発表に関しては、発表予定・発表済みのものを含め、当初よりいくらか遅れは見られるものの、大幅な遅れがみられるのは調査状況であるため、区分(4)を選択するに至った。これは、インドにおける新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、同国への渡航が困難となり、当初の研究計画で予定していた、本研究を遂行するうえで不可欠となる中長期にわたる現地調査を通じた新たな史料収集、およびフィールドワークによるデータ収集の双方とも断念せざるを得なかったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、本年度はインドにおける史料収集・フィールドワークを予定していた。しかし、前年度に引き続き、インドにおける新型コロナウイルス感染症拡大のため渡印が困難であったこと、また、2022年4月時点でも日本政府により不要不急の渡航中止が発出されていることから、新たな現地調査の実施に関しては難しいことが予想される。そのため、渡航制限が現状よりも緩和されるまでは、これまでに収集したデータや日本国内で入手可能なデータを用いた分析を行い、主に日本国内において研究成果の発信を行うことになると思われる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、インド渡航が年度を通じて困難となったため、当初旅費として申請していた助成金を使用できなくなり、次年度使用額が生じた。次年度は渡航が可能となり次第、旅費に充当する予定である。それまでは、主に次年度の研究のための物品費、あるいは研究成果発表の際の論文校閲費等に使用する予定である。
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