2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K13461
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
河合 文 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (30818571)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 狩猟採集民 / 移動と社会 / 空間の再編 / オラン・アスリ / マレーシア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は半島マレーシアに暮らす狩猟採集民集団の社会の動態について、移動性の変化という観点から考察する。半島マレーシアは感染を主な交通路として社会が発展してきた地域であるが、植民地時代より現在まで鉄道や道路建設が進められてきた。これにともない人々の交通手段も筏や舟からバイクや車へと変化し、特に近年ではこうした変化が奥地に暮らす狩猟採集民でもみられるようになっている。 本研究で対象とするのは、半島北部クランタン州のオラン・アスリ村クアラ・コを拠点とする人々であり、彼らの親族が生活する同州のポス・ルビル村、ポス・アリン村、そしてトレンガヌ州のスンガイ・ブルア村、パハン州のスンガイ・サット村などでもフィールド調査を行う。 昨年度に続き、2021年度も新型コロナウイルス感染症拡大をうけてフィールド調査を実施することができなかった。SNS等で現地とのコミュニケーションを継続し、現地協力者や行政関係者などとの連絡も取りながら現状把握に努め、以前の調査で収集したデータの分析を行った。また、カウンターパートのスルタン・ザイナル・アビディン大学が企画したICLC2021(The International Conference on Languages and Communication)にも参加し、マレーシアにおける近代化や開発にたいする考え方について議論を行った。さらに、対象とする人々の暮らしにかんする単著を出版した。 しかし、本研究の遂行においてフィールドワークは必須であることに変わりはなく、成果をだすためにも今後のフィールドワークが求められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度も新型コロナウイルスの感染拡大によって、フィールドワークを実施することができなかった。いっぽう、オンラインや電話でマレーシアのカウンターパートや調査対象者とコミュニケーションを密にとるだけでなく、欧米等の研究者とオンライン会議をもつなどして本課題に関連した議論を行い、理解を深めることができた。 また、新たにマラヤ大学のCenter for Malaysian Indigenous Studiesとの関係を構築し、オンラインで今後の研究協力について打ち合わせを行うことができた。 さらに、国立民族学博物館の「地域研究画像デジタルライブラリ」に参画し、同地域で調査をおこなってきた複数の調査者が撮影した1960年代~2010年代の写真をデジタル化・データベース化を進め、個々の村々の環境や生活の変化を比較しやすい状態に整理している。 またさらに昨年度からのデータ分析を継続し、とくに人口動態の整理を中心に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスにかんする状況が改善され次第、マレーシアでの調査を予定しているが、調査対象である人々のワクチン接種状況やマレーシアにおける感染状況に応じて、現地での自主隔離なども検討しつつ調査地に入ることにする。 フィールド調査を行える場合は、主要調査村であるクアラ・コ村にてインタビュー調査を行い、親族関係、人口動態、人々の村間の移出/移入を明らかにする。さらに参与観察、インタビュー、GPSを用いた空間利用調査から、人々の空間利用についても調査する。また同時に乗り物等の移動手段、移動の目的、期間、頻度といった点もインタビューする。 また万が一上記調査を実施できない場合も、現地とのコミュニケーションを密にとることで現状の分析と成果発表につなげる。 さらにデジタル画像アーカイブの画像整理を進め、各調査村における環境の変化、人々の暮らしや移動技術の変化といった観点から分析を進める。そしてマラヤ大学のCenter for Malaysian Indigenous Studiesの協力をえて、デジタル画像を活用したハイブリッド型のシンポジウムを開催し、オンライン配信等で現地の人々にも還元できるような活動を実施する。
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Causes of Carryover |
2021年度に予定していたマレーシアでの長期フィールド調査を行わなかったため、それに向けて申請していた旅費や謝金、調査に必要な物品費を使用しなかった。これについては、2022年度の調査やシンポジウム等の費用として使用する計画である。
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