2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K13461
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
河合 文 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (30818571)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会変化 / 狩猟採集民 / 移動 / オラン・アスリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はマレーシアの狩猟採集民を対象として、移動という観点から社会の変化について考察することを目的に実施してきた。川沿いの森を移動する遊動生活を送ってきた狩猟採集民であるバテッは、森林の分断と道路の開通という状況下で、政府が設置した村を拠点とする生活へと変化している。そうした暮らしにおける人々の関係について、バイク等乗り物へのアクセスや移動性の低い子育てへの従事といった点に着目し、個々人の空間利用と移動、親族ネットワークと居住/キャンプ集団の関係、移動がなされる環境の変化という大きく三項目について調査・分析し総合的に考察してきた。なお新型コロナ感染症の流行をうけ2020年度~2022年度の3年間はフィールド調査を実施できなかったため、研究期間を1年延長し2023年度までとした。 その結果、これまで「血縁」や「婚姻」関係から考察されてきた親族関係を人々の実際のインタラクションに基づく「つながり」という観点から考察し、拠点型の生活に変化するにつれて、それまで広く行われてきた食物の分かち合いといった実践が、同じ拠点で暮らす人々に限定される傾向が強まっていることを指摘した。また、2000年代初頭より人文社会科学分野で使用されるようになったモティリティ(motility、移動可能性)とモビリティ(mobility、移動性)の区別が狩猟採集民社会にも必要である点を指摘し、近代社会における移動格差との類似性を議論した。 これらは単著や雑誌論文として発表した他、国際学会でも発表し議論を深めた。さらに社会変化下にあるバテッや、それ以外のオラン・アスリ(マレーシア半島部の先住民)について国際シンポジウムやワークショップを主催した。
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