2019 Fiscal Year Research-status Report
非言語的取引に伴う信頼関係の考察―カトマンズの観光市場タメルの宝飾商売を事例に
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19K13465
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
渡部 瑞希 帝京大学, 経済学部, 講師 (60782589)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 道徳経済 / インフォーマル経済 / キャッシュレス・ビジネス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、カトマンズの観光市場タメルで、SNSによるビジネスを展開する中国人観光客の実態を明らかにするものである。 これを明らかにするため、本年度の4月から7月は、中国人観光客の主要な取引相手であるインド系ムスリムの宝石商人に焦点をあてた。まずは、2018年度の現地調査で得たデータを、2019年7月にインド・デリーのSouth Asia Universiyで開催された国際学会で発表した。具体的には、インド系ムスリム商人の間では、親族や同郷人の間で競争や裏切りがあるにも関わらず、近年彼らは、親族・同郷単位での結束や協力をますます強めていることを明らかにした。これは、中国人観光客とインド系ムスリムが、非言語状況で信頼関係を築きづらい取引きの中で、いかにして相互信頼に基づくビジネスを展開しうるのかをテーマにした本研究の解明の手がかりとなる。 本年度の8月から9月にかけて、現地でフィーウドワークを実施する予定であったが、8月に妊娠がわかり、体調と出産時期の関係で、本年度はフィールドワークを実施できなかった。そのため、8月からは、中国のキャッシュレス・ビジネスの構図を捉えるために文献調査を行った。その結果、中国のキャッシュレス・ビジネスは、中国銀行の代替として出現した、法的規制の弱いインフォーマルな側面を有していること、そうした側面が、同じくインフォーマル経済で成り立っているタメルの市場取引きにうまく適応した可能性が明らかとなった。 フィールドワークは、育児休業期間が終わる2021年度に再開する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、現地でのフィールドワークを必須とする。しかし、2019年8月に妊娠がわかって以降、本研究の実施は大幅に遅れてしまった。そのため、本年度は国際学会での成果発表のみで、後は文献調査を行うのみとなった。ただし、当初より予定していた文献調査では、新たに多くの情報収集ができたために、十全に実施できたものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今度の推進方策としては、(1)中国語習得に向けた学習を最低限にとどめ、信頼のおける中国語通訳者を早急に見つけること、(2)文献調査を継続して行うことである。(1)に関しては、申請者自身はネパール語やヒンディー語といった別の言語使用も必要とするため、中国語の学習時間に限界を覚えたためである。(2)に関しては、中国のキャッシュレス・ビジネスは想像以上に巨大市場であり、それでいてインフォーマルな側面も深部にあるために、日本語文献だけでなく英語文献等広く調査する必要があると考えたためである。
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Causes of Carryover |
次年度の使用額が生じた理由は、本年度に現地でのフィールドワークに行けなかったためである。翌年度は、現地調査(二回分)の旅費で70万円程度、中国語の通訳者への謝礼で20万程度を予定している。その他の助成金は、学会発表の旅費や参加費、文献費用に充てる予定でいる。
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Research Products
(2 results)