2019 Fiscal Year Research-status Report
グローバルな環境変動の中の人間-サンゴ礁関係:メラネシアにおける文化人類学的研究
Project/Area Number |
19K13468
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
里見 龍樹 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (30802459)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 環境変動 / サンゴ礁 / メラネシア / ソロモン諸島マライタ島 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、メラネシアのサンゴ礁に居住する「海の民」と呼ばれる人々における環境変動の体験・認識について民族誌的に明らかにすることを通じて、現代のグローバルな環境変動について人類学的に考察するための方法論を提示しようとするものである。メラネシアのサンゴ礁は近年、生物多様性がきわめて高い海域として国際的な注目を集めているが、他方で、海水温の上昇によるサンゴの大量死滅が生じるなど、環境変動による生態系破壊が懸念されている。本研究は、ローカル/ナショナル/グローバルな諸動向が「社会」と「自然」の両面で交差し合うこのような対象に注目することで、新たな環境人類学を開拓し、それとともに、人類学が現代的な仕方で「自然」について考えるための指針を提示しようとするものである。2019年度は、すでに2018年度に得られていた現地調査のデータに基づき、以上の指針に沿って積極的に研究成果を発表した。ソロモン諸島マライタ島の「海の民」におけるサンゴ礁との関わりとこの人々の民俗生態学について、これまでに得られた知見を、日本文化人類学会研究大会およびAAA/CASCA連合大会で口頭発表した。また、同様な研究成果を、論文「「育つ岩」―コミュニケーション/エージェンシーの限界をめぐる試論」として執筆し、同論文は杉島敬志(編)『コミュニケーション的存在論の人類学』(臨川書店)に収録されて出版された。さらに、以上の研究の過程で行った、現代の人類学についての理論的検討の成果を、論文「人類学の存在論的転回―他者性のゆくえ」として雑誌『現代思想』(2019年5月臨時増刊号)に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに2018年度に豊富な現地調査データが得られていたため、2019年度に予定していたソロモン諸島マライタ島での現地調査は見送った。それでも、上記の通り豊富な研究成果を発表することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に引き続き、これまでに得られている現地調査データの検討を進める。これと並行して、現代の人類学理論における「自然/文化」の二分法の見直しと、本研究が理論的にどのように関わるかについて、立ち入った検討を行う。2020年度にはソロモン諸島マライタ島での現地調査を行うことを予定していたが、新型コロナウイルス感染症の流行を受けたソロモン諸島の入国制限により、現地調査が実施できるかどうかは不確定になっている。現地調査を行うことができない場合には、上記の理論研究により軸足を置いて研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度に予定していた現地調査を行わなかったため次年度使用額が生じた。当該の予算は2020年度の現地調査で使用する予定である。
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