2021 Fiscal Year Research-status Report
An Affective Anthropology of Physical Movement and Human Experience in the Case of Pole Dance as Sport, Art, and Entertainment in Contemporary Japan
Project/Area Number |
19K13471
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アフェクト(情動) / 身体 / 生成変化 / 舞踏 / スポーツ / 芸術 / ダンス / 身体実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年は書籍の分担執筆の出版、そして3つの口頭発表という形で2021年度に本研究成果の発表ができました。 さらに本年度末に一本の学会誌の投稿論文の最終的な提出ができ、来年度初めに出版することになります。 本研究では、ポールダンスの実践者の観点からその実践への情動的な人類学 (affective anthropology)を実施しており、ポールダンスのことを ①ダンス ②スポーツ ③芸術(アート)として捉えて、その実践を明らかにすることによって身体実践及び情動への人類学的な理論を展開させて、さらに日本での身体実践およびジェンダーへの理解を深めることができています。2021年度はとくに「生成変化」という概念を駆使することによって、ポールダンスと暗黒舞踏との接続点が明らかになりました。これは、研究協力者との創造的なコラボレーションを通して、ポールダンスがエンターテインメント、暗黒舞踏は芸術という固定概念を揺るがし、身体的実践の可能性を切り開いた成果がありました。同時に、ポールダンスの実践にみられる、独自の官能的な側面を考慮し、その「エロス」についての研究成果を書籍の分担執筆および英語での国際学会で発表することができました。また、映画監督および映画館と連携し、映画のパンフレットへの執筆および映画館でのトークを通して、この研究からより明白になって情動論および身体運動に関わる人類学についてより広く発信することができました。さらに、札幌市を拠点としている舞踏集団「極北会」とコラボレーションをして舞踏とポールダンスとの融合を試した舞台作品を作成し発表することで、この研究の意義をより深く掘り下げて、札幌市民と共有することもできました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大によって予定していたほどフィールドワークができていなかったものの、インターネットを駆使しオンラインで聞き取り調査を実施できています。この調査に基づき、未だに明らかになっていないポールダンスのオーラルヒストリーをも作成しています。また、ローカルのダンサーやアーティストと連携することで、感染拡大にならないような形で研究を進めています。
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Strategy for Future Research Activity |
ポールダンスのオーラルヒストリーを作成していることから、ポールダンスそのものは欧米だけではなく日本の夜のお店、とくにショークラブという現場で誕生したものであることが分かりました。そのため、人類学および日本学にとって代表的な研究となっている、Anne Allison著の『Nightwork: Sexuality, Pleasure, and Masculinity in a Tokyo Hostess Club』のようにショークラブの現場に入って、観客とのやり取りからショークラブという現場、そこで踊ることを検討することも予定しています。このような現場は「エンターテインメント」や「風俗」として見下されがちですが、日本にとって重要な産業になっており、先入観に囚われずその意義を深く掘り下げたいと思っています。また、観客の視点のみならず、ポールダンサーの観点を彼女らのライフストーリーから徹底的に考察して、日本で女性として生きること、ポールダンスを踊ることを明らかにすることによって、女性またはダンサーとしてより生きやすい日本になるように研究を通して貢献がしたいと考えています。同時に今まで行っていた調査を継続し研究成果をさらに一層深めていきます。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルス感染拡大のため、フィールドワークという、身をもって現場に行く必要のある研究調査が減ったこと、そして学会発表がオンライン開催となり実際に会場まで足を運ぶことがなかったからです。本研究にとって、フィールドワークという現場に行って身をもって調査をすること、そして学会で若手として他の研究者とつながることが何より大事と考えられるので、上記の事情は残念に思います。 来年度は感染拡大の予防対策を注意深く行いながら、より現場でのフィールドワークを実施して、現場性に満ちた研究題材を集めること、そして学会で他の研究者とつながりネットワークを構築することに励む予定です。具体的にいえば、国内のポールダンスの会場に身を置いて参与観察を行い、ポールダンス界の先駆者となっている、日本人ダンサーへの聞き取り調査を対面で行う予定を組んでいます。そして、人類学のみならず周辺分野の研究者と、オーストラリアでの学際的な国際ワークショップの予定を立てています。
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