葬儀の変化メカニズムに関する人類学的研究 ：現代韓国の葬儀革新・保存運動を中心に

2022 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 19K13477
• Research Institution: Research Institute for Humanity and Nature
• Principal Investigator: 金 セッピョル 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 特任助教 (00791310)
• Project Period (FY): 2019-04-01 – 2024-03-31
• Keywords: 葬儀 / 大邱 / 儒教

Outline of Annual Research Achievements

大邱・慶北出身女性たちのライフヒストリー調査 :本研究の調査対象の一つである葬儀保存運動は、主に大邱・慶北地域を舞台とする。今年度は引き続き、この地域出身の女性たちにライフヒストリー調査を行った。この調査を通して、大邱・京北地域の近現代史を個人の視点で見直すと共に、儒教の影響が強いこの地域で、儒教的ライフサイクルの周辺部に位置づけられる女性たちが、いかに死と葬儀を経験したかについて捉えようとしている。
今年度の調査では祭祀に不可欠な息子出産の圧力が女性たちの人生に深刻な影響を及ぼしていることが明らかになった。また、その圧力のなかで人生を全うした末、儒教的な葬儀の観念をいかに受容しているか・していないかに関しても少し話を聞くことができた。多くの女性が息子出産などの儒教の圧力に耐えてきていながらも、依然として儒教的葬儀に根本的な拒否感を抱くことはあまりないように思われる。むしろ儒教的葬儀が相変わらず望ましい葬儀として思われている節もある。
儒教的な葬儀を望ましいとする傾向は、ソウルの葬儀社やソウル市周辺の国立の総合葬儀施設への調査においても確認された。都市化によって家族の形態が変わり、また外形的には土葬から火葬へ変化が進んでいても依然として儒教的な葬儀が理想的な葬儀として捉えられているところがあり、それが葬儀者の施設やシステムに影響していることが確認された。
今年度のこのような調査結果は、葬儀の変化メカニズムを明らかにしようとする本研究課題において、従来のあり方がいかに存続するかを知る上で、重要な知見となる。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

今年度は対面形式で長期調査ができたため、多くの成果があった。

Strategy for Future Research Activity

今後は、儒教的葬儀を理想的なものとする傾向がなぜいまだに見られるか、そのメカニズムについて明らかにしていきたい。そのためにこれまで集めてきたインタビューデータなどを分析・考察すると同時に、必要に応じて追加調査を行う。また、成果発信に注力したい。

Causes of Carryover

成果本の出版を計画していたが年度内に実行できなかったため、来年度に繰り越す。