2023 Fiscal Year Research-status Report
葬儀の変化メカニズムに関する人類学的研究 :現代韓国の葬儀革新・保存運動を中心に
Project/Area Number |
19K13477
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
金 セッピョル 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 客員助教 (00791310)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 葬儀 / 儒教 / 伝統 / 喪輿 / 葬列 / 文化財 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、喪輿保存活動(伝統葬儀保存運動)に関するフィールドワークのため、2回、韓国・大邱に渡航した。その成果として、第一、喪輿小屋という有形文化財を中心に行われていたこの運動が、大きな転換を迎えていることを確認できた。構成員たちは、この運動の意義が有形文化財の保存・継承に限らず、喪輿小屋に込められた葬儀文化であることを自覚していたが、従来の文化財行政においては受け入れられていなかった。今回の訪問では、文化財行政が変化し始めており、葬儀文化を軸に据えた施設を構想中であることがわかった。また、どのような経緯でこのような変化が可能であったか、行政側にインタビューすることができた。 第二の成果は、このような変化、及びこの運動の原動力について新しい知見を得たことである。この研究を始めた頃は、この運動の原動力が、近代化で失われたとされる「伝統的」葬儀への回帰希望であると考えており、それが韓国の葬儀の変化メカニズムにおいて最も重要だと考えていた。しかし現状はそれだけではなかった。会員たちのライフヒストリー調査の結果、喪輿小屋が過去の不特定多数の死が刻まれているマテリアルとして再解釈され、構成員たちに特殊な情動を呼び起こしていることがわかった。つまり、喪輿小屋が「伝統的」な葬儀と関連があるかどうかより、その情動が運動の大きな原動力になっている可能性がある。さらにこの情動が呼び起こされるきっかけとして、身近な人の死の経験があることがわかった。自分とは直接関係のない、不特定多数の死の痕跡が刻まれた喪輿小屋から、自分が身近に経験した死、さらには自分の死を想像するような過程があるということは、近年の死の個人化の傾向を鑑みると、特筆すべき現象である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィールドワークは順調に進んでいる。また、成果発信のための準備も概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、喪輿小屋が呼び起こす情動に焦点をおいて、さらに調査を進めたい。また、書籍や論文執筆を進める。
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Causes of Carryover |
書籍刊行の予定であったが、執筆中に追加調査の必要性が浮上した。次年度使用額で追加調査を行い、出版費用に充てる。
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