2021 Fiscal Year Research-status Report
レソトにおけるジンバブエ移民行商人の会計方法にかんする人類学的研究
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19K13478
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
早川 真悠 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 外来研究員 (20720361)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人類学 / ジンバブエ移民 / レソト王国 / 行商 / 会計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、南部アフリカにおける人びとの「固有の会計方法」を明らかにすることにある。具体的には、レソト王国におけるジンバブエ人移民の行商活動について、彼ら独自の会計方法(価値の計量、財産管理、取引記録)に焦点を当て人類学的調査をおこない、その結果を近代会計や監査制度と比較する。 本来であれば今年度が最終年度のはずだったが、昨年度に引き続き新型コロナ感染流行の影響により、現地調査ができず十分なデータが得られなかった。感染症流行の影響を受けて行商人たちを取り巻く環境も大きく変わっており、インフォーマントたちと個人的な連絡を続け近況を確認し、彼らとの関係を維持しながら経済活動や生活実態を少しでも把握しようと努めた。このような個人的で細々としたメッセージ交換が研究成果に直結するような資料をもたらすわけではないが、こうした細々としたやりとりが人類学的調査の土台になっていると改めて確認できたことはひとつの収穫だった。 今年度の成果として次の論文がある:「何気ないかかわりあい:ハラレとジンバブエにおけるフィールドワークの経験から」栗本英世・村橋勲・伊東未来・中川理(編)『かかわりあいの人類学』、大阪大学出版会。この論文で考察した、ジンバブエの日常生活においてごく自然におこなわれる人びとのゆるやかなかかわりあいは、人の行為や時間を記録し固定するフォーマルな(会計)制度とは対照をなすものであり、本研究が明らかにしようとしている「(行商人ら独自の)会計方法」と深く結びついている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルスの感染流行により、2年連続で予定していた現地調査ができておらず、行商活動の実態が十分に把握できていないため。 また、調査対象であるジンバブエ人移民の行商そのものも感染症流行の影響を受けて維持することが難しくなっており、彼らの経済活動や生活が不安定に変化しつづけているため。
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Strategy for Future Research Activity |
・課題期間を1年延長し、可能であれば2022年度に現地調査を実施する。 ・これまでの調査で得られたデータを再検討し、貨幣や行商、信用など経済人類学にかんする文献を踏まえてできるかぎり考察を進める。 ・インフォーマントが行商するときに記録している帳簿の一部をデータで送付してもらい、その解釈について助言を受けながら内容について分析する。 ・インフォーマントたちとできるかぎり連絡をとり、彼らの経済活動や生活実態を少しでも明らかにする。
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Causes of Carryover |
・新型コロナウィルス流行の影響で、海外出張を中止したため。 ・可能であれば2022年度レソトの現地調査を再開し、海外出張費として使用する。
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