2019 Fiscal Year Research-status Report
Human-animal relations in the domestication of fox and mink, tanuki and the modernization of fur industry
Project/Area Number |
19K13479
|
Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
大石 侑香 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 特任助教 (80790849)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ドメスティケーション / 毛皮 / グローバルヒストリー / 人と動物の関係 / キツネ / クロテン / ミンク / シベリア |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2019年度は、ロシアと日本において文献資料・物質資料の収集および現地調査を行った。 2019年8月と2019年2月には、東シベリアのサハ共和国ゴールヌィ地区のある村落において、飼育技術と加工技術、流通、毛皮動物狩猟の現状について現地調査を行った。また、ヤクーツクのロシア科学アカデミー・シベリア支部の図書館および博物館等において毛皮交易と産業の歴史に関する文献資料を得た。さらに、ヤクーツクの二大毛皮加工場において現地調査を実施し、ロシアの毛皮流通と加工技術についての知見を得ることができた。3月には、日本の宮城県白石蔵王においてキツネの放し飼い飼育の技術について現地調査を行った。 これらの調査により、キツネ飼育における生殖介入では、人が選んだ雄キツネを雌キツネが拒否することが繰り返されており、雌キツネによる交配相手の選択余地が残されていること、また、キツネはクロテン等と比べ、新しい環境や習慣に早く慣れることといった、キツネのドメスティケーションに関する知見を得ることができた。さらに、現在のロシアの毛皮の流通に関して、サハのキツネ飼育の規模は縮小傾向にある点、毛皮の集積地がソ連期以降変化している点、冬用ブーツの素材となるトナカイの足の毛皮については西シベリア産のものがシベリアの各地に運ばれ加工されている点等の情報を得ることができた。2019年度にはロシアと日本の飼育技術は似通っているが、その後の産業の展開の仕方が異なることが分かった。それらを比較することで、社会的背景の観点から人と動物との関係の変化の特徴を考察していきたい。今後、これらの調査成果を分析し、論文を執筆していく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シベリア現地調査では、現地研究所と村落の方々の甚大な協力のおかげで順調にインタビュー調査を行うことができ、予想以上に多くの資料を収集することができた。また、毛皮動物狩猟と飼育産業に関する重要な物質資料・文献資料も入手することができた。しかし、2020年3月には国内においてもかつて毛皮産業が盛んであった地域で現地調査を進める予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて、調査計画を一部中止することになった。そのため、(2)おおむね順調に進展しているを選択した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、引き続きロシアと日本において以下の現地調査を行う予定であるが、新型コロナ感染拡大の影響により中止する可能性が高い。 予定する調査の内容は、具体的に、ロシアでは、かつて毛皮交易の中心地であったイルクーツクと現在の毛皮生産・加工の拠点であるノヴォシビルスクとモスクワの毛皮獣飼育場および加工工場において調査を行い、ロシアの毛皮産業史と技術史を明らかにする。日本では、かつてミンクやキツネ、ヌートリアの毛皮生産を行っていた北海道および新潟、タヌキ飼育の中心地であった北九州において現地調査を行い、日本の毛皮産業史と技術展開を明らかにする。 現地調査ができない場合は、先行研究の収集・整理と国立民族学博物館の毛皮資料研究、2019年度に収集した資料の精読・分析、論文執筆を行い、研究を進める。また、小課題として、国立国会図書館および日本毛皮協会において『毛皮ジャーナル』や毛皮産業関連の社史、農業政策等の資料を収集し、大正時代から始まったキツネ・タヌキ・イタチ飼育、戦後からのミンク飼育の展開過程を整理し、日本の毛皮産業全体像を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
新型コロナ感染拡大の影響を受け、3月に予定していた国内出張および外国人研究者招聘を中止したため。国内出張については、次年度(2020年度)に実施を延期する予定である。外国人研究者招聘中止分は、次年度に先方との共著論文の英文校閲費等に使用する予定である。
|
Research Products
(5 results)