2022 Fiscal Year Research-status Report
Human-animal relations in the domestication of fox and mink, tanuki and the modernization of fur industry
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19K13479
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大石 侑香 神戸大学, 国際文化学研究科, 講師 (80790849)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 毛皮 / ドメスティケーション / グローバルストーリー / 狩猟 / キツネ / ミンク |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、ロシアにおいて毛皮産業に関する現地調査を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大とロシアによるウクライナ侵攻の影響をうけて中止した。代わりに、毛皮標本収集とグリーンランド調査を行い、物質文化の観点から毛皮の需要の変遷についてや、近年の狩猟の変化と毛皮生産との関係について分析した。物質文化研究では、グリーランドのイヌやワモンアザラシ、ホッキョクキツネなどの毛皮を収集し、シベリアのオオカミやテン類などの毛皮の物質性と人間の利用方法を比較した。また、グリーンランドにおいて毛皮の市場調査および現地のハンターたちへの聞き取りを行った。 結果として、物質文化比較研究からは、チュクチやイヌイトらが防寒という機能性重視の毛皮利用を行うのに対して、西シベリアの人々が毛皮の防寒機能だけでなく、種ごとに異なる聖性が毛皮あるとみなして臀部を覆うズボンの作成に毛皮を用いなかったり精霊の化身である犬猫の毛皮を使用しないということなどが明らかになった。この研究から、毛皮動物飼育においてこうした毛皮観がいかにあらわれるかという新たな検討項目を得た。また、グリーンランド調査からは、ジャコウウシがスノーモービルの音を怖がることで生息域が変わり、それにともない他の動物らの分布も変化したなど、人間活動と動物行動の関係とそれによる狩猟の変化といった生態的つながりについて知見を得た。 これらの研究成果を単著の一部に入れて公表した。また、一般向けのアウトリーチとして国立アイヌ民族博物館と北海道立北方民族博物館でシベリアの毛皮利用に関する講演を行い、動物種による毛皮の特性の側面から彼らの装いのありかたを提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の主な実施内容はフィールドワークによるデータ収集とその分析である。しかし、本年度は新型コロナウィルス感染拡大およびロシアによるウクライナ侵攻の影響により、予定していたロシア等への調査渡航を控えた。そのため進捗状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
1年間延長申請をして、8月から9月にフィンランド、3月にアラスカ、2月に函館でのフィールドワークを行い、論文執筆に十分な資料収集を行う。
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Causes of Carryover |
ロシアと日本でフィールドワークを行う計画であったが、新型コロナウィルス感染症拡大およびロシアによるウクライナ侵攻の影響を受けてやむなく中止した。そのため、旅費や現地からの資料輸送費、調査補助の謝金費等が使用できず、次年度使用額が生じた。2022年度が最終年度であったが、1年間の延長申請をし、2023年度にフィンランド、アラスカ、函館において調査を行い、すべての予算を使用する予定である。
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