2019 Fiscal Year Research-status Report
高齢期の雇用・所得保障政策と法的課題-日韓比較法研究
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19K13480
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
朴 孝淑 神奈川大学, 法学部, 准教授 (70602952)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高年齢者雇用 / 所得保障政策 / 定年延長 / 再雇用制度 / 年金制度 / 不利益変更 / 年齢差別禁止法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高齢期の雇用・所得保障政策と法的課題を日本と韓国を中心に比較検討することにその目的がある。2019年度は、主に韓国の公的年金制度を分析し、高年齢者の活躍を推進する環境整備(主に所得保障政策の整備)の在り方について検討を行った。 韓国における高齢化は日本を上回るスピードで進んでおり、近い未来に到来する超高齢化社会に向け、様々な問題が提起されている。特に韓国の高齢者貧困率は、OECD加盟国のなかで最も高い。たとえば、65歳以上の場合、韓国(45.7%、2015年基準)は、日本(約19%、2012年基準)よりも約2倍以上高い。こうした現状を踏まえ、まずは、韓国の高齢期の所得保障制度(主に公的年金制度)を中心に検討を行った。 韓国の老後所得保障体系は、国民年金、個人年金、退職年金、国民基礎生活保障制度、基礎老齢年金など、多層の老後所得保障体系が確立されている。しかし、日本や諸外国とは異なり、公的年金の導入時期が遅れたことにより、まだ未成熟の段階にある。短い年金加入期間に伴う実質所得への代替率の低さ、低負担・高給付という体系に伴う財政問題(国民年金の持続可能性の問題)、多数の国民年金の適用除外者や納付例外及び長期滞納者の存在など、韓国における老後所得保障体系には多くの死角地帯が存在する。また、多層所得保障体系の構築を目標に導入した退職年金も中小・零細事業場の低い導入率と義務適用対象者の制限により、国民年金の限界を補う老後所得保障としての機能を充分に果たしていない状況である。 本研究では、上記のように、韓国の公的年金制度には、外見上は多層所得保障体系を構築しているが、各々の制度はそれぞれ問題点を内包していることがわかった。これらの研究内容を踏まえ、これからは、安定した老後所得保障体系を構築するための法政策課題や日本を含む諸外国の所得保障体系との比較法的研究を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度には、日本と韓国の高年齢者雇用政策・所得保障政策の動向を明らかにすることを目的に、関連する基礎文献を収集・分析を行った。その成果として、労働問題リサーチセンター研究会(「『働き方改革』をめぐる労働立法と今後の課題」)にて、「(超)高齢社会の到来と高齢期の所得保障政策-韓国の公的年金制度を中心に」というタイトルで、報告を行い、研究会に参加した研究会委員より沢山のコメントや指導をいただくことができた。報告内容は2020年6月頃に出版される報告書に掲載される予定である。また、日本の研究も進んでおり、日本の所得保障政策の動向を文献を中心にまとめることができた。これらの作業は2020年度も引き続きバージョンアップしていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、ヒヤリング及び現地調査のため韓国と欧米への出張を予定していた。ただ、コロナウイルスにより、海外への出張が難しくなっており、予定通りの研究活動を遂行できない可能性がある。万が一、コロナウイルスの影響により、2020年度の現地調査が予定通りにできなくなった場合は、現地調査は2021年度に行うことにしたい。その場合、2020度には、引き続き、研究課題に関連する日本と韓国、欧米(必要がある場合に限る)の文献・資料、判例を収集・分析し、2021年度の現地訪問調査のための予備調査・検討を行うことにしたい。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由) まず、2019年度は所属先の変更に伴い、海外訪問調査等の実施が難しくなったことにより、旅費に未使用額が生じた。また、大学の教員研究費を使って機材等を購入し、所属研究会の研究費を使って必要な書籍等も購入することができたため、物品費にも未使用額が生じた。 (使用計画) 2020年度は、より本格的な研究活動を行う予定であり、現地訪問調査、書籍購入、判例分析のためのDVDの購入、インタビュー調査のための謝金など、研究のための諸費用が発生することが予想される。これらの諸費用の一部に未使用額を使用する予定である。
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