2020 Fiscal Year Research-status Report
高齢期の雇用・所得保障政策と法的課題-日韓比較法研究
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19K13480
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
朴 孝淑 神奈川大学, 法学部, 准教授 (70602952)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高齢期の所得保障政策 / 全国民雇用保険制度 / 韓国の雇用保険制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日韓における高齢期の雇用政策、所得保障政策の全体像を描写することにある。本研究目的を達成するために、まずは、韓国の公的年金制度を中心に検討を行い、令和2年5月にはその成果を、リサーチセンター研究会(公益財団法人労働問題リサーチセンター)の報告書に掲載することができた。また、東アジア社会保障法フォーラムに通訳として参加し、本研究課題とも少し関連のある高齢者介護システムについて、日・韓・中・台の研究者らと意見交換を行うことができた。その成果として、フォーラム報告者の論文(韓国の老人長期療養保険法の現状と課題)を翻訳し、雑誌(社会保障法研究)に掲載した。 このような研究成果をもとに、令和2年度は、引き続き、韓国の雇用保険制度について検討を行った。令和2年度は、コロナ過の勃発により、雇用環境は大きく変容した。コロナ過により労務提供が不能となった労働者に対しては経済的補償措置がとられることとなったが、65歳以後に採用された高年齢者や独立自営業者などに対する経済的補償は十分とはいえない。 例えば、韓国政府は、雇用維持支援金や失業給付を支給するとともに、ポストコロナ対策としてすべての就業者に雇用保険を適用する「全国民雇用制度」を導入するなど、雇用脆弱階層に対するセーフティーネットを強化するための対策を講じているが、65歳以後に採用された高年齢者は、依然として雇用保険の適用除外になっている。現行の公的年金だけでは高齢期の所得保障を十分に保護することができないことから鑑みると、高年齢者に対するセーフティーネットの再編を広い視野から捉えて検討する必要がある。 このような問題意識の下で、韓国の「雇用保険制度」と「全国民雇用制度」を中心に検討を行い、令和2年11月のリサーチセンター研究会ではその成果を報告することができた。令和3年4月には報告書を提出し、5月に刊行予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は、韓国の雇用保険制度を網羅的に検討し、上記(「研究実績の概要」を参照)のような成果を出すなど、文献研究は概ね順調に進展していると考えている。 一方、本研究課題の目的を達成するために、令和2年度には、現地訪問調査(関連資料の収集、インタビュー調査など)を行う予定であった。しかし、新型コロナウイルスの影響により、現地訪問調査を行うことができず、本研究課題の提出当時に予定していた諸外国の研究者と有益な意見交換(インタビュー調査)を行うことは容易ではなかった。また、海外図書館の閉鎖・資料複写サービスの制限などに伴い、資料収集にもやや時間がかかっている。 日本と韓国の高年齢者雇用政策・所得保障政策を検討するにあたって、諸外国の研究者からのフィードバックや意見交換、インタビュー調査は、本研究にも有益な示唆を与えてくれると思われるため、令和3年度は、現地訪問調査研究ができることを期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、主に韓国の高年齢者雇用政策・所得保障政策を中心に検討を行った。今後は、今までの研究成果の整理(韓国の公的年金制度及び雇用保険制度の整理)、諸外国の実態とその要因解明の作業を継続しつつ、さらに、以下の検討を行うこととする。 まず、日本の公的年金制度及び雇用保険制度の展開過程と状況、判例(裁判例)の分析である。韓国における高年齢者雇用政策・所得保障政策についてはある程度の研究成果を出すことができたが、比較研究としての日本の研究は不十分であるからである。 次に、現地訪問調査(韓国)のための予備調査・検討である。特に高年齢者雇用をめぐって、韓国では、賃金ピーク制度(雇用の延長に伴い、賃金などの労働条件を引下げる制度をいう)を適用する場合が多く、その法的問題が指摘されている。賃金ピーク制度の概念整理、現状、判例(裁判例)動向も分析する。
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Causes of Carryover |
令和2年度は、現地訪問調査を行う予定であったが、新型コロナウイルスの影響により、現地訪問調査を行うことができなくなったことが、その理由である。
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Research Products
(4 results)