2019 Fiscal Year Research-status Report
Survey on the purpose of tort damages: toward constructing empirical based research on punitive damages
Project/Area Number |
19K13484
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
森 大輔 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 准教授 (40436499)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 抑止 / 制裁 / 損害賠償 / 統計分析 / 法と経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
「懲罰的賠償と利益吐き出し:消費者詐欺の事例によるサーベイ実験」を2019年度日本応用経済学会秋季大会で報告した。この研究は、懲罰的損害賠償および、それと関連してしばしば触れられる「利益吐き出し」について、法と経済学的な観点から理論分析を行い、さらにアンケート調査を行ったものである。すなわち、消費者問題などで、被害額以上の賠償を加害業者に課す提案の正当化理由として法と経済学では被害の内部化が言われることが多いが、「利益の吐き出し」という正当化理由が法学などでは挙げられることもある。その経済学的な意味を述べ、日本の一般人にとっていずれが受け入れられやすいのか(あるいはいずれも受け入れられないのか)ということをサーベイ実験の手法で調査したものである。また、"Rent-Seeking Model of Litigation and Punitive Damages Multiplier"を6th Economic Analysis of Litigation Workshopで報告した。これは、懲罰的損害賠償に関する法と経済学的な理論分析である。すなわち、法と経済学では、懲罰的損害賠償の額の決定に関して、加害者の行為の発見確率の逆数ということが言われることが多いが、その場合、額が増えることによる、原告の訴訟提起のインセンティブの増加や、裁判での原告と被告の争いの激化などの要素は通常勘案されていないので、これらの要素を取り入れた場合にどうなるかということを分析したものである。その他、関連して懲罰的損害賠償がたびたび議論される分野である消費者問題に関する実証的な調査に関する論文や研究報告、抑止という観点から懲罰的損害賠償と関連を有する刑事的な制度の抑止効果に関する研究報告などを行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、アンケート調査を行うが、それについて以下の手順で行う予定であった。すなわち,1. 質問紙の検討 2. 調査の実施 3. 調査結果の分析,という順である。初年度は、「1.質問紙の検討」において,質問紙に掲載する質問や仮想事例の検討を行う予定であった。本研究では,懲罰賠償が問題となりうるような状況を含む仮想的な事例を用いるが,森・池田・髙橋(2017)で用いた三菱自動車脱輪事件以外の事例としてどんな事例が適切かを考えることが重要となる。これについて、高齢者の消費者問題(リフォーム詐欺)の事例を初年度は選択した。そして、「2. 調査の実施 」としてインターネット調査を実施した。さらに、「3. 調査結果の分析」も進め、学会報告を行った。また、初年度に、懲罰的損害賠償の人々の行動への影響について理論的な分析も進めることになっていたが、これについても海外での学会報告を行った。このように、概ね当初の予定通りに研究は進んでいるということができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
「懲罰的賠償と利益吐き出し:消費者詐欺の事例によるサーベイ実験」で報告した、消費詐欺の事例に関するアンケート調査について、さらに分析を進める。また、森・池田・髙橋(2017)で用いた三菱自動車脱輪事件について、米国で行ったアンケート調査の結果の分析を進める。さらに、その後にこの調査に基づいて日本で再度アンケート調査を行ったが、それとの比較も行う予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの蔓延により出席予定であった国際学会がキャンセルになり、その分の旅費が未使用となった。本年度以降に行うアンケート調査での費用として使用する予定としている。
|