2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K13497
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Research Institution | Ryutsu Keizai University |
Principal Investigator |
水林 翔 流通経済大学, 法学部, 助教 (00826240)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジャン・ドマ / 旧体制 / フランス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、主にフランス近代法を旧体制期において準備したジャン・ドマの思想について研究を行った。とりわけ、フランス革命で実現した近代集権国家としてのフランスの原像が、宗教的な法観念を背景に一元的な法秩序を構想したドマにあることを、論文を通じて明らかにした。 その内容を多少詳しく述べる。従来、旧体制期の統治秩序は社団国家と呼ばれ(二宮宏之)、国王の支配は必ずしも一元的に達成されてはいなかったとされている。無論実際の統治システムと法思想は別論であるが、そうした時代状況において、より国王の手に権力を集中するための法秩序の構想がドマにおいてなされており、それは、従来主権国家の理論提唱者とされてきたジャン・ボダンのそれに比肩しうる体系であったことを論じた。 ドマの法思想の根源に存在したのは、宗教的な―すなわち人間世界から超越した―「法」であった。世俗世界を規律する「法律」は、この「法」に従うことを要求される。ドマは、世俗権力を神のそれと結合することで、法秩序において極めて純度の高い体系性を確立することに成功したのであった。こうした神の法に準拠する世俗の法というモチーフは、19世紀以降の近代フランスにおいても繰り返し用いられてゆくようになる。 以上の研究成果は「ジャン・ドマにおける公法理論」(『流通経済大学法学部流経法學』 19(1) 85 - 126 2019年9月)にて公表されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画を超え、ジャン・ドマの思想の全体像を上記論文にて把握することができた。 今後はドマを踏まえフランス革命以降のフランスにおける法思想の展開をより細かに検討してゆきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
現在研究テーマとして検討しているのは、近代フランス法において欠くべからざる要素たる「市民」という概念である。旧体制を精算し、共和国として出発した近代フランスにおいて、それを支える政治主体としての「市民」像とはいかなるものであったのかという点は、政治社会の未成熟がなおあらわとなっている我が国にとっても重要な研究テーマとなろう。
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Causes of Carryover |
2019年度については年度末のコロナウイルス問題もあり、少々の残額が生じた。 次年度については引き続き研究テーマに関わる物品費とりわけ書籍・資料代として活用予定である。
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