2019 Fiscal Year Research-status Report
租税法と通貨~外国通貨及び仮想通貨の課税制度を中心とした比較法研究~
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19K13498
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
泉 絢也 千葉商科大学, 商経学部, 講師 (70816735)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 仮想通貨(暗号資産)と所得区分 / 外貨の課税関係 / 譲渡所得の基因となる資産 / 災害税制 |
Outline of Annual Research Achievements |
以前より研究を進め、学会報告を行っていたため、その報告を整理した論文を学会誌に掲載する機会を得ることができ、次の点を明らかにした(「仮想通貨(暗号通貨、暗号資産)の譲渡による所得の譲渡所得該当性」税法学581号3~32頁(2019))。 仮想通貨の課税関係について、日米の課税庁はいずれも、外貨の取扱いとの整合性を意識し、仮想通貨は外貨ではないとする。他方、仮想通貨がキャピタルゲインを生じる資産ないし財産に該当するか否かという点について、仮想通貨を外貨と同様に扱うという方向性自体は一致するが、到達する結論は真逆である。日本の国税庁はこれを否定し、米国の内国歳入庁はこれを肯定する。米国における議論を参考とするならば、国税庁の結論は法的根拠が明らかでないことを指摘できる。 また、このことを踏まえ、国税庁の上記結論の法的根拠を探求した。国会における議論を手掛かりとして、国税庁は、仮想通貨は資産ではあるが譲渡所得の基因となる資産(所得税法33条にいう資産)には該当しないという資産性否定説を採用していること及び仮想通貨の支払手段性を強調することにより、仮想通貨がキャピタルゲインを生じる資産に該当しないと解していることを明らかにした(「なぜ、暗号資産(仮想通貨、暗号通貨)の譲渡による所得は譲渡所得に該当しないのか?」千葉商大論叢57巻1号109~133頁(2019))。 さらに、近年、日本で災害が頻発していることを踏まえ、災害復興ツールとして仮想通貨を利用する方策も考えられるが、税制上の障壁が存在することを明らかにするとともに(「災害復興を巡る税制」月刊税理63巻3号205~218頁(2019)、令和元年度税制改正において仮想通貨税制や関連法制が整備されたことを踏まえて、改正法の評価等に関する学会報告を行った(「仮想通貨(暗号資産)取引と課税」日本租税理論学会2019年度研究大会)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
折しも仮想通貨に関する税制改正がなされ、また、国会で本研究課題に関わる議論がなされた。このことにより、予想外に検討材料を入手することが可能となり、本研究課題に関わる論文をいくつか公表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画で予定していた作業を引き続き進める。具体的には、比較法研究として、オーストラリアの仮想通貨税制等の検討を行う。
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Causes of Carryover |
比較法研究のため外国文献等を購入する予定であったところ、国内における税制改正の実施や国会での議論の深まりなどがあり、安価な国内資料を入手することができたことから、外国文献の購入についてはその一部を先送りしたため。
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Research Products
(4 results)