2021 Fiscal Year Research-status Report
租税法と通貨~外国通貨及び仮想通貨の課税制度を中心とした比較法研究~
Project/Area Number |
19K13498
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
泉 絢也 千葉商科大学, 商経学部, 准教授 (70816735)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 暗号資産 / 仮想通貨 / ノンファンジブルトークン / 期末時価評価課税 / DAO(分散型自律組織) |
Outline of Annual Research Achievements |
決済手段として暗号資産を利用するDAO(分散型自律組織)について、誰も課税されない、どこの国も課税されない財産を作り出すことができるという問題意識を示した(千葉商大紀要59巻1号)。 同様に暗号資産を決済手段として利用した、かつ、暗号資産の基盤技術であるブロックチェーンを使ったNFT (ノンファンジブルトークン)の取引が増えたため、NFTに関する課税上の問題を明らかにした。まず、課税関係を考察する際の着眼点として、①NFTそのもの、②NFTに紐付けられた資産ないし権利、③その紐付けの態様の3つがあること及び基本的には②に着目すべきであることを前提とした上で、NFTの譲渡による所得はキャピタルゲインとして所得税法上の譲渡所得に該当しうる、非課税所得に該当する可能性がある、②の資産が実物資産か、デジタル資産かによって課税上取扱いが異なることの合理性に疑問がある、という見解を示した(月刊税務事例54巻3号、千葉商大論叢59巻1号、千葉商大紀要59巻1号所収)。 諸外国の暗号資産税制の特徴を整理した上で、日本の暗号資産税制との相違点や暗号資産税制を組み立てるに当たって参考となる点を明らかにした(国際商事研究学会報告)。 法人税法上の暗号資産に係る期末時価評価課税の問題点及び改正案を提言した。具体的には、他国は期末時価評価課税を行っておらず国際競争力を阻害するという問題点、株式や短期売買商品と異なり保有目的と問わずに課税をしており、中立性や公平性に反するという問題点、事業遂行上売却・換金が困難である場合にも課税される可能性があるという問題点を指摘した上で、外形的に短期売買目的で保有していると判断される暗号資産については期末時価評価課税の対象から除外するという提案を行った(自民党NFTプロジェクトチーム勉強会報告)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、暗号資産に関連して、NFT(ノンファンジブルトークン)やDAO(分散型自律組織)など、新しい取引や課税問題に遭遇したが、これらの課税問題に関する研究を行いつつ、OECDのレポートや外国の研究をベースとしてアメリカ、イギリス、イタリア、オーストラリア、カナダ、シンガポールなど諸外国の暗号資産税制を整理・研究することができた。また、法人が保有する暗号資産に対する期末時価評価課税の問題が新聞等で取り上げられたことをきっかけとして、この点に関する研究も行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
暗号資産の業界団体の協力の下で、期末時価評価課税に関する企業アンケートやヒアリングを実施する。研究の総括として、諸外国の税制や議論を参考としつつ、所得税法や法人税法を中心にあるべき暗号資産税制の提言を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が少額であったため、書籍購入費用等に充てることができなかった。
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Research Products
(5 results)