2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K13499
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
高田 実宗 駒澤大学, 法学部, 准教授 (50805794)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 計画行政法 / 道路交通法 / 道路法 / 環境法 / 都市法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、次世代が求める交通システムについて、計画法の観点から、それを支える統合的な法的基盤の構築を試みることであった。すなわち、現代社会が求める交通政策には、さまざまな要請が反映されるため、それを支える法領域が多岐にわたっており、かつ、それら各法領域は独自の法理論を発展させてきた。そして、そのような諸法令に基づく権限は、複数の主体に分担されている。そうした複雑な利害状況の下にある交通政策について、どのように、各法領域および諸権限の調整を横断的に図っていくのか、そして、その全体的な合理性を如何に担保するのか、このような学術的な問題意識を出発点として、わが国の行政法が手本としたドイツ法との比較法研究を行っているところである。 2021年度においては、上記の研究目的を踏まえ、2020年度に引き続き、都市の道路交通を支える法的枠組みについて、ドイツ法を参照しながら、道路管理権と道路警察権との関係性から紐解き、都市計画の法領域で醸成された手続重視の姿勢が道路交通の法領域にも影響を与えているという計画法理論の抽出に成功した。さらに、2021年度は、いわゆる電動キックボードのような新たなモビリティの出現を踏まえ、その普及が我が国よりも先行したドイツの法的議論に着目する研究を行った。そして、フリーフロート型のシェアリングサービスに伴う路上駐車を素材に、いかなる道路利用は許可の不要な一般使用であるか、他方、いかなる道路利用は許可を要する特別使用であるか、といった公物法理論の再構成に迫る根源的な問いの提起を試みた。この他、交通基盤を支える法的仕組みについて、わが国における法政策の展開を分析し、その行政法理論への反映を模索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画によれば、2021年度は、ドイツに渡った資料収集を通じ、とりわけ、現地で注目を集めている交通改革(Verkehrswende)に関する法的問題など、研究材料となる最新情勢の把握を努めるとともに、路上駐車をめぐる公物法上の議論、さらには交通計画における自治体の役割といった話題へと視座を移す予定であった。そして、そうした具体的な話題を素材とした小論を書き進めながら、これと並行して、これまでの研究成果を体系化すべく、都市の道路交通を支える法的枠組みにつき、それを纏めた論考を発表するという青写真を描いていた。以上の計画は、下記に触れるとおり、コロナ禍による渡独の断念および論文執筆の一部停滞があったものの、概ね、その進捗が順調であるといえよう。 2021年度は、2020年度から続く新型コロナウイルス感染拡大のために、海外への渡航が大きく制限された。こうした事情に伴い、本研究においても、ドイツへ渡った資料収集は断念せざるを得なくなり、当初の計画に大幅な修正を迫られた。そして、最新資料の入手が難しくなったため、とりわけ、交通計画における自治体の役割について、その小論の執筆が滞った。しかしながら、コロナ禍以前にドイツで収集した資料が手元にあり、かつ、インターネットを通じた最新資料の収集が、ある程度は可能であったため、こうした利用可能な研究資源を活かし、予定していた研究活動の大半は遂行することができた。そして、こうした研究活動による成果は学術論文に仕上げ、学術雑誌『行政法研究』(39号)において公刊された。加えて、インターネットを活用した従前より高度な情報収集活動が功を奏し、当初は想定していなかったような研究素材を把握することができ、それを踏まえた小論も大学紀要『駒澤法学』(21巻3号)での発表に漕ぎつけた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、2021年度が本研究の最終年度の予定であったが、先に触れた新型コロナウイルス感染症に伴う渡独の断念を主たる理由として、その研究期間の延長を図ったところである。そして、こうした情勢下ではあるものの、2022年度は、勤務校において、在外研究の機会に恵まれたため、ドイツ連邦共和国のボン大学法学部に客員研究員として在籍しながら、本研究を深めていくこととなる。 2022年度はドイツに滞在するため、2020年度および2021年度に実施できなかったドイツ語文献の渉猟に励むとともに、現地においてドイツ人の研究者および実務家との人的ネットワークの構築に努めたい。とりわけ、道路法制に関するワークショップや交通法大会に招待されているため、現地における最新の声を肌で感じる機会に恵まれよう。 2022年度においては、まず、2021年度に執筆できなかったテーマとして、交通計画における自治体の役割という話題があるので、これを素材とした論考の執筆に励む予定である。加えて、今後の研究活動においては、交通基盤の保障という問題に視座を移しつつ、交通政策を支える各法領域の射程および限界について、ドイツの判例および学説を丹念に紐解きながら、わが国の交通法制と整合させつつ、その体系的な整理を図っていきたい。そして、引き続き、こうした研究成果を外部の学術雑誌や大学紀要等へと積極的に公表し、本研究の成果を計画法理論へと纏め上げていく所存である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大に伴う海外出張の制限により、当初の計画にあった旅費の支出が生じなくなった。今後、当該費用は出張旅費として支出する予定である。
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Research Products
(4 results)