2019 Fiscal Year Research-status Report
地方自治体の独自措置による食文化の保護・継承に関する比較法研究
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19K13500
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Research Institution | Kanazawa Seiryo University |
Principal Investigator |
土屋 仁美 金沢星稜大学, 経済学部, 講師 (80727040)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 食品安全 / 食品衛生法 / HACCP / 民間規格 / 公的規制 / EU / リスク管理 / 製品の差別化 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本において、食品の安全性の確保は、市場メカニズムの活用が必ずしも適切ではなく、市場メカニズムを補正しつつ活用することが必要な領域として、行政による積極的な関与が必要とされてきた。食品安全分野における基本法である食品安全基本法においても、法律全体を貫く基本的な思想として、「国民の健康保護が最も重要であるという基本的認識の下」で、あらゆる措置が講じられなければならないことが定められている(同法3条)。 しかし食品安全分野では、世界的に「検査」に基づく管理からリスクに基づく「過程」管理への移行がみられる。とくにメタシステム としてHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point:危害分析・重要管理点)方法論が重視されている。 EUでは、2002年にHACCP方法論に基づく食品安全管理システムが導入され、規制方法の変更に対応して民間規格が広く発展してきた。EU食品安全分野における分析には、公的規制とともに民間規格を考慮することが必要であり 、公的規制と民間規格の関係について議論が活発に行われている。 日本においても、2018年6月に食品衛生法が改正され、従来の製品「検査」アプローチから「過程」管理アプローチへと変更された。全ての食品等事業者に対して、HACCP方法論に基づく衛生管理計画の作成が求められており(食品衛生法50条の2)、民間の役割が重視されている。EUと同様に、日本においても民間規格の発展が予想されるが、日本の食品安全分野における民間規格の位置づけや公的規制との関係性は明らかになっておらず、議論も不十分である。 そこで、すでに2002年にHACCP方法論が導入され、議論の蓄積があるEU食品安全分野を参考に、食品の安全性の確保における民間規格の位置づけと公的規制との関係について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度は、食文化の観点から、日本の食品分野における各地方自治体の独自政策について調査する予定だった。国内的な規制との抵触や乖離の有無、市場への影響などから、各地方自治体による食品措置の現状と問題点を明らかにしたうえで、各地方自治体の独自措置の根拠となる自然的経済的社会的諸要素を調査することを進めていた。 しかし、2018年6月に食品衛生法が改正され、HACCP方法論に基づく食品安全管理システムが導入され、規制方法が従来の製品「検査」アプローチから「過程」管理アプローチへと変更されたことで、地方自治体の役割にも変化が生じている。従来の規制方法において、食品の安全性の提供に責任を負ってきた都道府県等の公的機関の負担が、効率的な監視指導の推進により軽減されることになった。 そこで、2019年度は、日本におけるHACCP方法論の制度化による影響として、すでに2002年にHACCP方法論が導入され、議論の蓄積があるEU食品安全分野を参考に、市場における民間食品規格の機能に注目しつつ、食品の安全性の確保における民間規格の位置づけと公的規制との関係について考察した。 また、新型コロナウィルスの感染拡大の影響から、出張や研究会への参加等が叶わず、予定を変更せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、日本の公式文書、判例、学説をもとに、日本の食品分野の政策決定過程における「科学的知見」と「価値」との関係について明らかにし、国の食品政策における地方自治体の独自措置への対応、自由競争市場の維持と文化多様性の均衡について考察する。 2020年度も引き続き出張や研究会の開催等が難しい状況が続いているため、文献研究等を中心に、食品安全分野におけるHACCP方法論への変更に伴う食文化への影響について考察する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響から、2020年2月から3月末までに予定していた出張・研究会等への参加をキャンセルせざるを得ない状況となった。 2020年度も引き続き、国内外を含めて出張や研究会への参加ができない状況が続くことが予想される。そこで、書籍等の購入に加えて、国内外のデータベースにアクセスできる環境を構築し、オンラインでの文献調査を中心に研究を進める予定である。
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Research Products
(1 results)