2020 Fiscal Year Research-status Report
地方自治体の独自措置による食文化の保護・継承に関する比較法研究
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19K13500
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Research Institution | Kanazawa Seiryo University |
Principal Investigator |
土屋 仁美 金沢星稜大学, 経済学部, 講師 (80727040)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | HACCP / 食品の安全性 / 食文化 / EU / flexibility / 柔軟性 |
Outline of Annual Research Achievements |
食品は、生命・健康を維持するために必要不可欠であるだけではなく、生活様式や経済的、社会的立場によって変化し、文化的な要素を含む点に特徴がある。和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたことで、和食文化の保護・継承が求められており、地域独自の食文化に注目が集まっている。住民の生命権・健康権の保障だけではなく、和食文化の保護・継承の観点から、地域独自の食文化をどのように保護していくのかが問題になっている。 食品の安全性については、食品関連リスクに対する消費者の意識の高まりに対応して、食品の規制範囲が拡大し、安全基準が厳格化され、検査に基づく管理からリスクに基づく過程管理へと移行している。日本では、2018年に食品安全管理システムとしてHACCP方法論が導入されたが、EU食品分野では、すでに2002年に導入されており、活発に議論が行われている。 日本の食品分野では、もっぱら食品の安全性の確保から議論されてきたが、EU機関とEU加盟国の食品分野では、伝統的製品を含めて食品供給の多様性を考慮に入れた「高水準の人の健康保護と食品に関する消費者の利益」を保障しており(EU一般食品法1条1項)、食文化と食品の安全性の確保が一体的に追及されている。HACCP方法論においても「柔軟性(flexibility)」に基づいて、食品の安全性の確保とともに食文化の保護と継承に取り組んでいる。 そこで、食文化・伝統等の地域の特殊性の保護・継承について、食品分野における地方自治体の独自措置を基礎づけるための法理論を構築するために、食品の安全性の確保と地域の食文化の保護・継承を一体的に追求してきたEU機関の食品関連政策を対象として、いかなる制度を通じて食文化の保護・継承を試みているかを明らかにし、その運用の実態について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルスの感染拡大の影響から、2019年度に予定していた各地方自治体による食文化の取組調査を2020年度にも実施することができなかった。 そこで、EU食品安全分野における文献研究等を中心に、食品安全分野におけるHACCP方法論への変更に伴う食文化への影響について考察した。 また、日本については公式文書、判例、学説をもとに、主要農作物に焦点を当てて、国の食品政策における地方自治体の独自措置への対応、自由競争市場の維持と文化多様性の均衡について考察している。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響から、2019年度と2020年度は、先行研究の収集・分析をを中心に、食品の安全性の確保と地域の食文化の保護・継承を一体的に追求してきたEU機関の食品関連政策を対象として、いかなる制度を通じて食文化の保護・継承を試みているかを明らかにし、その運用の実態について検討を行ってきた。 2021年度は、2019年度と2020年度の研究成果を踏まえて、日本の公式文書、判例、学説をもとに、国の食品政策における地方自治体の独自措置への対応、自由競争市場の維持と文化多様性の均衡について考察する。また、新型コロナウィルスの感染状況を考慮しつつ、日本における各地方自治体による食文化への取組調査を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響から、2020年度も2019年度に引き続き、国内外を含めて出張や研究会への参加ができない状況が続いた。2021年度も書籍等の購入に加えて、国内外のデータベースにアクセスできる環境を構築し、オンラインでの文献調査を中心に研究を進める予定である。
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