2021 Fiscal Year Research-status Report
地方自治体の独自措置による食文化の保護・継承に関する比較法研究
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19K13500
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Research Institution | Kanazawa Seiryo University |
Principal Investigator |
土屋 仁美 金沢星稜大学, 経済学部, 准教授 (80727040)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 主要農作物種子法 / 食料への権利 / 食品安全 / 食文化 / 市場メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
地域の特集性を踏まえた地方自治体による独自措置は、食文化の保存・継承にとって不可欠である。食品安全基本法7条においても、地方自治体の独自措置の必要性が定められている。 とくに「主要な食糧である米穀及び麦」は、「主食としての役割を果たし、かつ、重要な農産物としての地位」(主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律1条)を占めており、その種子の管理については、主要農作物種子法に基づき地方自治体の役割が重視されていた。主要農作物種子法の廃止後も、全国の自治体では、主要農作物種子法の規定を踏まえた条例が相次いで制定されている。各自治体によって違いはあるものの、全体的な傾向として、主要農作物種子法が担ってきた主要農作物の優良な種子の安定供給を目的としている。 対して、国際的な経済システムの拡大を背景に、農業分野においても市場原理に基づき、民間事業者の役割や私的な権利保護が重視されている。私的利益を優先する貿易協定と経済政策により、少数の民間事業者に権力が集中し、小規模農家が不利になるとともに 、消費者の食料への権利が脅かされる懸念が生じている。 そこで、主要農作物種子法の目的および日本の主要農作物をめぐる現状を踏まえて、食料への権利に対する主要農作物種子法廃止の影響、地方自治体の役割、市場メカニズムの活用の限界について明らかにした。また、食文化と安全性の確保、自給率の向上などの多元的な価値の均衡おける公的機関の役割について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルスの感染拡大の影響から、予定していたEU機関及びEU加盟国並びに各地方自治体による食文化の取組調査を実施することができなかった。 そこで、主要農作物種子法廃止の問題点について、主要農作物種子法の目的および日本の主要農作物をめぐる現状を踏まえて、食料への権利に対する主要農作物種子法廃止の影響、地方自治体の役割、市場メカニズムの活用の限界について明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
食品衛生法におけるHACCP方法論の導入により、日本の各地で食文化の継承に困難な状況が生じている。そこで、新型コロナウィルスの感染状況を考慮しつつ、各地方自治体による食文化の継承についての取組調査を行う。 また、食品の安全性の確保と地域の食文化の保護・継承を一体的に追求してきたEU機関の食品関連政策との比較検討を通じて、地域の食文化の保護・継承に必要な法制度について検討する。身体的健康だけではなく、精神的な健康の観点から、日本における地域独自の食文化に焦点を当て、国家政策と地方自治体の独自措置の関係や位置づけ、市場における影響、文化多様性との均衡について考察したうえで、食文化の保護・継承に求められる政策や取組について考察する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大により、EU機関及びEU加盟国並びに地方自治体への調査を行うことができなかった。 2022年度は、新型コロナウィルスの感染状況を考慮しつつ、現地調査を行う予定である。
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