2023 Fiscal Year Research-status Report
地方自治体の独自措置による食文化の保護・継承に関する比較法研究
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19K13500
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Research Institution | Kanazawa Seiryo University |
Principal Investigator |
土屋 仁美 金沢星稜大学, 経済学部, 准教授 (80727040)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 食品 / 食文化 / 十分な食料への権利 / 文化芸術振興基本法 / 食品安全基本法 / HACCP |
Outline of Annual Research Achievements |
食料は「生命」や「健康」の側面だけではなく、「文化」の側面からも捉えることが求められる。食料は個別的な生命・健康の維持に欠かせないものであると同時に、社会的、文化的な営みとして、精神的な健康にも大きく影響するからである。国際人権法では、すでに文化的側面を考慮した十分な(adequate)な食料への権利が認められており、個人の生理機能(性別、年齢、健康など)だけではなく、文化的側面を考慮した量、質および適切性が求められている。 従来、法学では戦前の全体主義的文化統制に対する反省から、「文化」は私的領域の問題であり、国家が介入しないとする意味での中立性が問題とされてきた。しかし、文化芸術振興基本法の成立を契機に、憲法学を中心に、文化に対する公的助成の憲法上の位置づけに関わる議論が活発に行われている。文化芸術振興基本法では、「文化芸術活動を行う者の自主性が十分に尊重されなければならない」(同法2条)と定めるとともに、国および地方自治体に対して「文化芸術の振興」を責務として規定している(同法3、4条)。 近年の食品分野においても、地域の特殊性を踏まえた施策を超えて、食文化の「保護」や「振興」、「継承」を含めた施策へと拡大している。しかし、日本の食品政策では、芸術文化基本法の前文が示すように、「文化芸術がその役割を果たすことができるような基盤の整備及び環境の形成は十分な状態にあるとはいえない」。 そこで、憲法学における「文化」の位置づけについて、とくに食品分野の「文化」的価値に焦点を当てて考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
能登地震のために、2024年1月から3月にかけて研究活動に取り組むことができず、研究成果として論文を執筆することができなかった。また研究成果をまとめる作業も大幅に遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
能登地震のために、能登周辺を対象にした食文化に関わる研究が困難になった。また、能登周辺だけではなく、地震の影響で伝統的食品の製造拠点(工場、自然環境等)に影響が生じている。 そこで今後は、伝統的食品の保護・継承だけではなく、伝統的食品の復興の観点を踏まえて、これまでの研究成果をまとめていきたい。
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Causes of Carryover |
2024年1月に発生した能登半島地震の影響で、予定していた研究計画が延期または中止になった。2024年度は、EU機関による食文化政策だけではなく、加盟国による柔軟性措置の実態について海外視察を実施し、報告書または書籍として研究成果を発表する。 また地域事例として、金沢市の食文化推進事業を分析することで、地方自治体の独自措置による食文化の保護・継承を基礎づけるための法理論の検討にとどまらず、地方自治体である金沢市とともに法的支援の可能性を探り、具体的な提案を試みる。
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