2020 Fiscal Year Research-status Report
historic research on the Ministerial Responsibility in France -from a viewpoint of the mixture of criminal responsibility and political responsibility
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19K13503
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Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
三上 佳佑 朝日大学, 法学部, 講師 (80805599)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フランス憲法 / フランス憲法史 / 議会制 / 大臣責任制 / 弾劾制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度における本研究課題の遂行過程においては、主として、19世紀前半におけるフランス議会制・大臣責任制の展開を負うことに取り組んだ。 19世紀前半において、大臣責任制の具体的な在り方は、同時期におけるフランス議会制時の具体的形相にとっては決定的な規定因子の一つを構成したと考えられるが、同時に、フランス革命より第五共和制の現代に至るまでのフランス大臣責任制の歴史的展開を実証的に跡付ける本研究課題にとっても、本年度における研究課題遂行過程は、極めて大きな位置を占める。何故なら、本年度における研究対象は、「立憲君主制」という政体における大臣責任と議会政治の実相に関する、一つの典型的形態の実相に肉薄するものだからである。革命以来のフランス憲政は、「共和政体」と「立憲君主制」の循環を経験してきたと指摘されている。そうしてみれば(歴史的に既に相対化されたとはいえ)、政体循環における一方の極である君主制における政治構造が、大臣責任制によって如何なる形で規定されてきたかを見定めることは、本研究課題における完成度を担保する上で、重要な作業である。 以上の作業の成果は、現在「フランス大臣責任制の展開における復古王政期の地位」と題する論稿に纏めている。同論稿は、『朝日法学論集』(第53号)上に49頁分の論説として掲載が確定し、現在校正(初校)段階である。2021年度中にかかる研究成果は公表予定であることを申し添えておく。以上の研究成果を以て、本研究課題はフランス憲政に関する通史的な研究の内、立憲君主制に関するそれを概ね完了したこととなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年2月以降における、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う日本国内の状況は、本研究課題遂行との関わりにおいても「当初予期していないことが起こ」ったものとして評価されざるを得なかった。 大学の講義・演習がほぼ完全にオンラインに切り替わったことによる全く新奇な教育上の負担は、本研究課題遂行者にとって、研究課題遂行に対するエフォートを下げざるを得ない事情となった。また、県境や都市圏を跨ぐ移動の自粛要請や、一定期間にわたって研究課題遂行者が資料収集の拠点としてきた東京都内の大学図書館、なかんずく早稲田大学図書館が、大学閉鎖に伴って利用できなくなったことは、本研究課題遂行にとって、大きな足かせとなってしまった。 従って、2020年度の情況一般を鑑みるに、進捗状況を「当初の計画以上に進展している」と評価することは客観的に妥当ではない。また、2020年度の研究内容が、それを纏めるところ論稿にして一篇にしかなっていないことも、量的な観点からは、必ずしも十分と評価できるところではない。 しかし、質的な観点からすれば、2020年度の研究遂行内容において、本研究課題中、フランス立憲君主制に関わる研究が一通り完成したことの意義は大きく、このような成果が感染症拡大の困難な状況において成し遂げられつつあることの意味は大きい。従って、「おおむね順調に進展している」との自己評価に至った。 なお、2020 年度における以上のような状況は、同年度の予算支出が無かったことの理由となるものであり、本予算が「基金」である観点から、感染症拡大下での大学を取り巻く状況が一定程度落ち着くことが期待される2021年度に移管、集中的予算執行を企図することは合理的であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度が研究課題遂行の最終年度となるため、フランス革命以来のフランス憲政史全体の通史的な研究を完成させることが、第一義的な目標となる。これに加えて、当初から計画していた比較法的な問題関心を更に発展させる。 より具体的には、これまでの通史的な研究の中で自覚的な問題関心の展開が必ずしも十分でなかったフランス第四共和制(1946年~1958年)についての集中的な検討を予定している。そこでは先ず、政治構造における政党本位と統治機構における議会本位が結合した状況において、大臣責任システムが、如何なる地位を占めたのかという問題意識を発展させる。また、戦前の第三共和制における政治的不安定という経験が、政治アクターの意識と行動において、第四共和制の制憲過程と憲政運用において、如何なる形で活かされたのか、あるいは活かされなかったのか、という経験を実証的に跡付ける作業は、議院内閣制の特殊一形態に関する分析として、憲法学界一般に対して、一定の貢献を構成するはずである。また、第四共和制初頭は、大統領制の採用可能性も含めて、多様な統治制度構想が議論された時期でもあり、同時期に対する立ち入った検討は、比較憲法学的な発展可能性を有するものであると言えよう。 なお、現時点では、2021年度における新型コロナウイルス感染症を巡る動向は未知数であるが、オンラインによる手段によるものも含め、一定程度以上の資料収集及び研究準備が整っていることを申し添えておきたい。
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Causes of Carryover |
2020年度は、本研究課題遂行者にとっては、研究課題遂行に割くエフォートが大幅に削られた年度となった。 本研究課題遂行者は2019年度末・2020年度初を以て所属研究機関を異動したが、新たな研究環境を、新型コロナウイルス感染症拡大という非常時の下で迎えることになった。このような状況は、資料収集のための都市間移動が制限されるなどの研究課題遂行に内在的な問題、更に講義や演習のオンライン化などに伴う教育エフォートの増加といった研究課題に外在的な問題を生じさせた。以上が次年度使用額が生じた理由である。 しかし、2020年度の経験蓄積の上での2021年度は、本研究課題遂行者を取り巻く研究・教育環境に、様々な意味での「常態化」が生じることが予期されるのであり、研究課題の一層の遂行と予算執行の集中的実施が十分に見込める。研究課題完成のための研究課題の設定および具体的方法論の設定も、既述の通り、既に具体的なレベルで実現している。
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Research Products
(1 results)