2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K13506
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
海道 俊明 近畿大学, 法務研究科, 准教授 (40626933)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 取消訴訟の排他的管轄 / 公定力 / 行政行為の効果 / 立証責任 / 行政裁量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦前において行政行為の実体法的効力として理解されていた「公定力」が、行政事件訴訟法により認められる手続法的効力として再整理された際に導出された「取消訴訟の排他的管轄」論について、歴史的な分析を通じて、その全体像の解明を試みるものである。研究計画においては、まず、伝統的「公定力」論についての歴史的研究を第1段階とし、第2段階として、「取消訴訟の排他的管轄」論と行政行為の諸効果との関係性や、各種の法現象や法理等(主張立証責任の分配、自力執行力、執行不停止原則、違法性の承継に係る原則的遮断の根拠等)に関する各論的な検討を予定している。 現時点においては、第1段階としての研究を鋭意行っている。戦前の行政裁判法時代の諸論文及び戦後初期の諸論文の精読を通して、日本国憲法の制定とそれに伴う行政裁判所の廃止・司法裁判所への行政事件審理の統一化といった制度的大転換がどのように戦後の「公定力」観に影響を与えたのかについて検討を行った。伝統的「公定力」観自体は、かかる制度的転換を経て比較的速やかにその存在感を失い、代わって手続的な公定力観が諸論者らにより提示された。もっとも、このような流れが各論部分にどのように影響を及ぼしたかについては、それぞれの法現象・法理等について子細に検討をする必要がある。このように、これまで行ってきた歴史的な検討を土台に、20年度は各論的検討を行い、実績を公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、19年度においては、研究実施計画の第1段階目の研究を行った。すなわち、まず伝統的「公定力」論について、その発展過程を考察するために、美濃部博士による提唱とそれに対する当時の学界の反応について分析を行い、最初期の「公定力」の内容を明らかにさせ、それが日本国憲法の制定といった歴史的転換点を経て、どのように「戦後」の公定力観へと引き継がれていったか(あるいは、無意識的にそのまま流用されたか)を検討した。現時点における公表業績はまだないが、以上の検討を土台に、20年度中に成果を公表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、上記の伝統的「公定力」論に関する検討を土台に、引き続き業績の公表を目指すべく、20年度は各論(取消訴訟の排他的管轄の排他性の機能、主張立証責任の分配、自力執行力や執行不停止原則、違法性の承継における原則的遮断の根拠)に目を向け、伝統的な「公定力」論によって統一的な説明が試みられていたこれらの現象や法理等が現在においてどのような分節的な説明がなされているのかを子細に検討する。 その上で、取消訴訟の排他的管轄論をもって、これらの法現象や法理等を一定程度説明可能な最大公約数を提示可能か(あるいは不可能か)検討を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
応募者は、本件科研費の応募時点においては、時間的に余裕のある夏季に集中して旅費等を執行し、種々のリサーチを行う予定であったが、応募後に、短期間で行うべき公務が生じたため、当該業務との兼ね合いで旅費等を執行することが困難となった。 今年度においては、一定の期間に旅費等の執行を集中させるのではなく、1年を通して偏重なく旅費等を執行していく予定であるが、新型コロナウイルスによる影響も考え、書籍等の購入についても積極的な執行を心がける。
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