2021 Fiscal Year Research-status Report
多文化社会における信教の自由と政教分離:「多様性のマネジメント」に基づく再構成
Project/Area Number |
19K13507
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Research Institution | Osaka University of Economics and Law |
Principal Investigator |
山本 健人 大阪経済法科大学, 法学部, 准教授 (60828937)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 憲法 / 信教の自由 / 政教分離 / カナダ憲法 / 合理的配慮 / 公的空間 / 多様性 / 多文化主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度-2021年度の目標は、①公共討議における宗教的価値観の許容可能性、②宗教に対する合理的配慮に関するカナダ憲法の理解について総合的に検討することである。また、2021年度には、カナダでの文献収集及び現地の大学教授や宗教団体等へのインタビュー調査を行い、現地の最新の動向を調査・分析することも計画していた。この点、カナダでの現地調査については、新型コロナウイルス感染症の影響により昨年度に引き続き中止せざるを得ない状況となった。 上記目標のうち、①については2020年度に日本への示唆も含めて検討を行ったため、2021年度はとくに②に焦点を当てた。研究実績としては、論文を1本を公表しているほか、2022年刊行予定の書籍(共著)が1冊ある。 公表した論文では、昨年度のシンポジウム報告で扱った再洗礼派のフッタライトとカナダ憲法上の信教の自由の関係について検討を行っている。同論文では、法多元主義や宗教制度主義の観点も踏まえた検討を行っている。2022年度刊行予定の書籍では、まず、本研究でカナダに着目する理由の一つである「多文化主義」がヨーロッパを中心に「失敗している」とされる言説を検討し、それが多くの場合でレトリックであることを指摘している。しかし、多文化主義のもとでも市民統合政策や法的枠組みに基づく多様性の管理手法が必要であることを指摘し、その手法としての「合理的配慮」を検討している。そして、合理的配慮の近年動向を整理したうえで、多様性の管理という局面において、合理的配慮が異文化コミュニケーションの側面を併せ持つ有益な手法であることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カナダでの現地調査が実施できなかったため、最新の実務動向や現地での正確な認識などを十分に反映することはできていないが、文献調査や研究成果の公刊状況から「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度にあたるが、新型コロナウイルス感染症に伴う現地調査の実施困難性がやや緩和されはじめているため、現地調査の可能性を探る。また、近年カナダ憲法は世界的な影響力をもっているため、現地調査の可能性はカナダ以外も視野に入れて検討する。こうした調査では、カナダ憲法の解釈や実践の各国の受容の仕方を調査することで日本での受容可能性を測ることができると思われる。いずれの現地調査も困難である場合、代替手段を検討する。 この他の点については、概ね順調に研究計画を進めることができているため、基本的には当初の計画通り遂行するが、最終的に代替手段では現地調査相当の成果を得ることができず、2022年度での現地調査の実施も難しい場合は、研究計画の一部変更が必要になると思われる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大のため、予定していたカナダでの現地調査を2020年度に引き続き中止したため。次年度使用額については、2022年度における現地調査の実施費用とすることを念頭においているが、2022年度における現地調査の実施も困難である場合、代替手段を検討し、当該代替手段の実施費用とする。
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Research Products
(2 results)
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[Book] 〈分断〉と憲法2022
Author(s)
新井誠、友次晋介、横大道聡
Total Pages
250
Publisher
弘文堂
ISBN
978-4-335-35909-5