2021 Fiscal Year Research-status Report
国籍による国家の法的構成員性への憲法学的検討―連合王国を対象として―
Project/Area Number |
19K13509
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
宮内 紀子 九州産業大学, 基礎教育センター, 准教授 (70755800)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国籍 / 国民 / 構成員 / 憲法 / 連合王国 / EU |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、連合王国を対象として、個人と国家の関係性を明白に示すものとされている国籍概念を再検討し、国家における法的構成員とは誰かを明らかにしようとするものである。連合王国では国籍概念は曖昧で漠然としたものとされ、本国市民以外にも旧植民地市民など歴史的関係を持つ者、つまり国家の法的構成員性の周縁にある者も存在し、これまでこうした者を中心に研究を行ってきた。 Brexitに伴い、これまで連合王国市民同様の権利が認められていたEU構成国市民の法的取り扱いが問題となっていた。本年はこの問題を制定法、レポートや議会での議論などを対象として研究を行った。離脱前にすでに入国・在留していた者のその在留については、新たな在留制度が設けられ、一定の期間内の各自の申請に基づき在留許可が認められることになり、これに基づき社会保障なども認められることになった。ただし、その在留が5年間に満たない場合は一部の社会保障などが認められておらず、この点については子どもの権利の侵害などを根拠として係争中の事件がある。また離脱後に入国する者については、移民法によるポイント・ベースシステムの下でその入国・在留が管理されることになり、非EU構成国市民と同様の法的取扱いとなった。 EU構成国市民は離脱後は外国人としてその在留資格に基づき、権利保障が行われている。これらの者は離脱前からも国籍法上は外国人とされてきたが、地方選挙権や社会権などが連合王国市民同様に認められてきたことから、権利保障の観点から法的構成員性の周縁にある者としてEU離脱に伴う法的取り扱いを検討した。Brexitに伴うEU構成国市民の法的取扱いの変容から、国籍への再検討、つまり国民と外国人の境界線について検討し法的構成員性について明らかにしようとする本研究に重要な示唆を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本国内から入手可能な書籍、レポートなどを中心に研究活動を行っているが、新型コロナウィルス流行のため連合王国での研究調査はいまだ実施できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
EU構成国市民の取扱いについて、関連する訴訟などがあるため継続して研究する予定としているほか、これまでの研究の総括を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初、連合王国への渡航を予定していたが、新型コロナウィルス流行のために渡航の実施ができていないため次年度使用額が生じた。次年度には渡航を実施したいが、実施できない場合は書籍などで研究を行う。
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