2021 Fiscal Year Annual Research Report
ヘイト・スピーチに対する非規制的施策の憲法学的考察
Project/Area Number |
19K13512
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
桧垣 伸次 同志社大学, 法学部, 教授 (00631954)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ヘイト・スピーチ / 表現の自由 / 政府言論 / 非規制的施策 / ヘイト・スピーチ解消法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、日本で実施されている非規制的施策について、具体的な内容を、これまでの研究成果をふまえてまとめた。日本では、国レベルでは法務省人権擁護局を中心に啓発活動等を行っており、地方公共団体の中にも、公表など独自の施策を実施しているものもある。本研究では、これらの施策の可能性と問題点を指摘した。 非規制的施策の問題点の一つとして、成果をはかることが難しいという点が挙げられる。この点については、政治行動論や政治心理学等との学際的な研究の必要性を指摘した。別の問題点として、啓発活動などの過剰の問題がある。すなわち、人気のない表現について、公権力が許されないと公言することにより生じる萎縮効果の問題である。この点について、アメリカの研究を参照しながら、説得と強制との区別の重要性を指摘した。ただし、両者の区別は相対的であるため、説得をする場合の主体や手法、その対象などを総合的に考慮する必要性がある点もまた指摘した。 非規制的施策の可能性について、このような手法が、表現の自由と反差別とのバランスをうまくとることができる手法である点も指摘した。ヘイト・スピーチがあいまいな言葉であり、それを規制する場合過度の規制になりやすい点や、規制する場合に生じるバックラッシュなどについても、日本とアメリカの研究を参照して検討した。その結果、規制によるデメリットが改めて浮き彫りになり、非規制的施策を必要最小限の規制との組み合わせが次善の策となりうることを主張した。
|