2020 Fiscal Year Research-status Report
国際経済法における無差別原則の変容と法解釈論の再構成
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19K13514
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
平見 健太 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 講師(任期付) (10812711)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 国際経済法 / 国際法 / 無差別原則 / 平等 / 規制裁量 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の研究成果をふまえ、2020年度は主として国際経済法分野に焦点を当て、関連する先行研究や国際判例の渉猟と分析を中心におこなった。とくに2020年度は、Robert E. Hudecの先行業績や、通説とは異なる見解を示した国際判例(たとえば、EC-Asbestos事件・上級委員会報告における個別意見(2001年))、あるいは新しい解釈の導入可能性を示唆した国際判例(たとえば、Argentina-Financial Service事件・上級委員会報告(2015年))に着目し、それぞれの立論方法と背後にある問題意識を理解することに努めた。 これらはいずれも、国家の正当な規制裁量を確保することを目的に従来の市場志向的な無差別原則の解釈論に疑義を呈するという点で問題意識が共通しているが、その一方で、無差別原則の構成要素(すなわち、①同種性(likeness)の有無の評価、②同種の対象間における不利益的効果(detrimental impact)の有無の評価、③無条件性要件(unconditionality)への該当性評価)のうち、どの部分の解釈を修正することによって上記問題に対処しようとするのかという点で、それぞれ異なるアプローチを採用していることが明らかになった。 なお、2019年度の研究成果について、当初国際学会で研究報告をおこなう予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大のために学会自体がキャンセルとなり実現しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の研究成果に関する国際学会での研究報告は時節柄見送らざるを得なくなったが、当初計画していたとおりの先行研究および国際判例の分析は行うことができ、次年度の研究に接続する知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究で明らかになったように、無差別原則の通説的な解釈論の修正を試みる主張がそれぞれ異なるアプローチを採用していたことをふまえ、こうしたアプローチの差異がなぜ発生しているのか、また各アプローチが結局のところ従来の解釈論を修正するに至らなかったのはなぜかといった点について、2019年度に明らかにした無差別原則の規範構造とその特質に照らして分析をおこなう予定である。 そのうえで、無差別原則の解釈論を再構成するための具体的方途につき、自説の構築を試みる。なお、新型コロナウイルス感染拡大の状況にかんがみ、研究成果の公表時期を2022年度に後ろ倒しする可能性も視野に入れつつ、研究を進めてゆくこととする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の拡大のため、2020年度の研究出張がすべてキャンセルになった。2021年度に海外出張が可能になるようであれば、未使用額分を出張経費として使用することとしたい。
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Research Products
(2 results)