2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K13516
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
中村 知里 関西大学, 法学部, 准教授 (30807475)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国際裁判管轄 / 人権 / 不法行為 / 国際私法 / 準拠法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、令和元年度以降、基本的に人権と国際裁判管轄にかかわる論点について個別的に検討を加えることにより、多面的に人権規範が国際裁判管轄に与える影響を検討する前提としてきた。最終年度である令和5年度は、このような個別的な研究を踏まえて、人権が国際裁判管轄に与える影響について包括的な検討をするとともに、個別的な論点についてもさらに検討を進めている。とりわけ、北朝鮮帰国事業をめぐる不法行為に基づく損害賠償請求について、国際裁判管轄が問題となった事例(東京高判令和5・10・30)について検討を行ったが、これは、国際裁判管轄と人権との関係において、重要な意義を持つものと考えられる。この事案においては、不法行為地管轄について判断するうえで不法行為の一体性をどのように捉えるかが被害者の救済の可否に影響し得ることに加え、被害者の人権保障、裁判を受ける権利の保障の観点において、緊急管轄が重要な意義を持ち得る。学説上、人権侵害に関連する訴訟であることが、緊急管轄を緩やかに認める方向にはたらくとの見解も示されていることから、緊急管轄がいかなる場合に認められるかの検討は、人権が国際裁判管轄に与える影響の点においても重要であろう。 以上の個別的な研究成果は、判例評釈において一部示している。総論的検討についてはなお公表に至っていない部分もあるが、今後、学会や研究会での報告により公表していくことを予定している。また付随的にではあるが、研究期間を通じて得た研究成果は、学生向けの書籍の執筆にも反映されている。
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