2019 Fiscal Year Research-status Report
Legal Character and Contents of "Human Rights Standards" in International Criminal Law
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19K13517
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
越智 萌 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (30837323)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 一般原則 / 人権基準 / 国際刑事司法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、国際刑事裁判所(ICC)や、近年増加する混合法廷や特別法廷といった、いわゆる中核犯罪の訴追および裁判を行う機関において適用される、「国際的に認められた人権基準(人権基準)」という規範の法的性格と内容について明らかにすることである。 2019年度は、問題背景の調査を行う(文献調査)こととしていた。そのため、本年度は、関連する文献の購入、分析にあてた。 また、「人権基準」の法源の一つと考えられる「一般原則」に関するこれまでの研究をまとめた書籍の出版、および一般原則に関する新規理論に関する英語論文の執筆を行った。書籍『国際刑事手続法の体系―「プレミス理論」と一事不再理原則』では、以下のような検証を行った。まず、国際刑事手続法の体系性と独立性について、「共通かつ独自の適用法の承認手法」という指標を提示する。この指標を用いた検討対象として、一般原則という共通の法形式を考察対象とした。一般原則の承認手法は、その原則を適用しようとする法分野のプレミス(premise:法分野が前提とする様々な事情や価値)を考慮して、諸国や国際法に共通の原則を修正、または、特定国の国内法の原則を選択するというものであるという、「プレミス理論」を提示した。プレミス理論によれば、国際法のプレミスと国際刑事手続のプレミスは異なるので、国際法における一般原則と、国際刑事手続法の一般原則は、その意味で異なると結論付けられる。次に、二重の裁判を規律する一事不再理という国際刑事手続法の一般原則に関する実証分析を行った。その過程では、様々な国の国内法における一事不再理規則の比較分析、様々な条約に取り込まれた一事不再理規則の比較分析、および国際刑事司法において一般原則として適用されている一事不再理原則の内容同定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、問題背景の調査を行うとして、「人権基準」概念に関する諸文献の分析を行った。問題背景の調査は順調であるが、完全であるとは言えない。一方、「人権基準」の一部を構成すると考えられる「一般原則」に関するこれまでの研究成果のまとめを行った。これは20201年度に行う予定であった@人権基準」の法的性格に関する研究の一部である。以上のことから、当初の研究予定は一部しか実施できなかった一方、3年目の研究を先取りしたために、全体としてはおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、もともと設定していた、「人権基準」の内容についての研究に加え、2019年度に完遂できなかった問題背景の調査を引き続き行う。 「人権基準」の内容については、①関連法令(条約)の条文解釈(法令調査)の上、②既存の解釈の妥当性を分析したのち(文献調査)、③判例を用いた実証分析を行う(判例調査)を行う。④補助的に、多様な国際刑事司法機関の実務家にインタビュー調査を実施する(国内外出張)。 問題背景の調査に関しては、引続き文献調査を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、3月に予定していた海外出張がキャンセルになったため。2019年度に予定していた海外出張は、2020年度に行う。
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Research Products
(9 results)