2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K13521
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
田中 佐代子 法政大学, 法学部, 准教授 (20709323)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 自衛権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、非国家行為体による攻撃に対して、国家は自衛権を行使することができるのか、という問題について、特に、自衛権行使対象となる非国家行為体の性質に着目して検討を行っている。 2020年度は、国連憲章制定以降の国家実行の検討を、前年度から継続して行った。自衛権を援用した国家や、それに支持・黙認・非難など何らかの反応を示した国家が、非国家行為体の性質をどのように捉えていたのかを分析した。2020年度中の公表には至らなかったが、現在参加している法政大学ボアソナード記念現代法研究所「現代国際秩序における正当性の相克」プロジェクトとも関連づけつつ、公表を目指した作業を進めている。 加えて、2020年度は、非国家行為体が関わる場合に限定せず、自衛権一般の研究を進めることができた。第一に、自衛権の先行行為たる武力攻撃は、攻撃の意図をもってなされたものでなければならないか、という問題について、学説の整理および国際裁判例の分析を行った。その結果として、最も重大な形態の武力行使である「武力攻撃」の要件を軸に自衛権概念を構成する限り、特定の国家を狙って攻撃を行う意図が必要である、と結論づけた。第二に、自衛権の諸要件を整理し、その観点から、日本のいわゆる敵基地攻撃能力をめぐる議論を評価することを試みた(国際法学会エキスパート・コメントNo.2021-2)。これら二つのテーマを通して自衛権行使一般についての検討を深めることができ、その成果を、今後、直接に非国家行為体に関わる研究にいかしていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のため、出張(学会や研究会への参加、資料調査など)が難しくなったこと、また、2020年度の特に最初の数か月はリモートでの研究・教育業務への対応に多くの時間を費やさざるを得なかったことにより、当初の計画通りには国家実行の分析を進められていない。他方、自衛権行使一般についての研究を進め、攻撃の意図の問題や、いわゆる敵基地攻撃能力について、一部の成果を発表することができた。そのため、全体としてはおおむね順調に進展しているものと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
関連する国家実行の分析を継続し、その成果を取りまとめて公表するための作業を進めていきたい。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍により出張を中止せざるを得ず、次年度使用額が生じた。リモートワークでの研究遂行に対応するための機器を引き続き購入するほか、図書購入、資料取寄せにかかる費用にあてる。
|