2019 Fiscal Year Research-status Report
The Enforcement of "Undertakings" by Estoppel in International Law
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19K13522
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若狭 彰室 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (00780123)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 禁反言 / 条約法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は,「規範創設的効果」が語られる国際法上の禁反言がいかなる目的と機能を持つ法理として正当化されるかを巡る考え方(正当化原理)につき,学説と判例に見られる従来の言説を整理した。それにより,合意保護,安定性確保,損害防止という3つの理解が析出された。各説においては,法理の目的の理解が異なり,それに応じて,法理の作動すべき場面(要件),法的拘束力ある規範を生じさせる理路(構成),そして法理の効果の内容と生じる規範の規律枠組(効果)が異ならしめられた。この分析作業により,従来,広義か狭義かという,もっぱら要件の外形的な広狭で語られてきた禁反言の複数の理解について,かかる相違の理論的基礎を検討する視座を得ることができた。また,これにより,国際判例の(不)統一性を判断する枠組が得られた。 こうした2019年度の研究は,本研究の核心的な問いである,「禁反言法理による約束の強制は,いかなる正当化原理に基礎付けられ,その規律は条約・一方的宣言の法理・制度といかなる関係にあると考えられるか」の前段に該当する。また,以下のように,後段の研究とも接続する。合意保護であれば本質的には差異がなく,他方で,安定性確保・損害防止であれば異質の制度と考え得る。この点への答えは,条約・一方的宣言(一方的行為)という,従来,国内法上の法律行為に類比して考えられてきた国際法上の制度の本質をどのように理解すべきかを踏まえる必要があるが,その前提となる知見を2019年度の研究により得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は,得られた研究成果を,学会報告(「国際法における禁反言法理の正当化原理と法形成」世界法学会 2019年度研究大会)及び論文(「国際法における禁反言法理の正当化原理」『世界法年報』第39号(2020))の形で公表することができた。おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,禁反言法理が用いられる国際事例をより広範に収集・検討し,そのヴァリエーションを明らかにすると共に,条約・一方的宣言(一方的行為)制度の理解を巡る歴史的変遷の確認と現代における諸見解の整理を行う予定である。
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Causes of Carryover |
為替の変動等により若干の差額が生じた。次年度に予定通り使用する予定である。
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Research Products
(2 results)