2020 Fiscal Year Research-status Report
De-(/Re-)construction of the Temple Structure of the Universal Declaration of Human Rights: From Hypothetical to Intersubjective Universality
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19K13525
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
根岸 陽太 西南学院大学, 法学部, 准教授 (50815983)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 世界人権宣言 / 現象学 / 志向性 / 間主観性 / 国際人権法 / 生活世界 / 友愛 / 法源 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、世界人権宣言(Universal Declaration of Human Rights)を基礎とする国際人権法が世界を貫く暴力原理に対抗する法体系として普遍性を有するかを問い直すものである。本年度は、世界人権宣言に埋め込まれた「自由-平等-友愛」という相互に連関する価値を問い直す試みとして、前年度に公表した論文とは異なる観点から考察を深めた(論文:「The Forgotten Principle of Fraternite」)。また関連する業績として、権力濫用に対して制限を加える欧州人権条約18条違反に関する判例紹介も公表した(評釈「メラビシュヴィリ判決)。 本研究が方法論として掲げる現象学につき、客観主義的な国際法学の普遍性認識を問い直し、国際法律家の主観的かつ相対的な意識(志向性)が生活世界の地盤を経由する方途を解き明かした(論文:国際法『学の危機と超越論的現象学』)。その方法論を法源論に当てはめて、伝統的な国際法形成のあり方を問い直すボトムアップの逆推論過程を示し、これまで構造的に締め出されてきた多種多様な要素を国際立法に包摂し直す可能性も切り開いた(論文:「慣習国際法と強行規範に関する国際法委員会「結論」)。 理論的な本研究を実践へと架橋する業績としては、社会権に関する手続的保障(情報・裁判・救済へのアクセス)が拡充していく傾向を捉えた論稿(「The Proceduralization of Social Rights」)、および日本におけるCOVID-19への対策が人権に与えた影響を評価する論稿(「Japan: A Human Rights and Rule of Law Assessment of Legislative and Regulatory Responses to the COVID-19 Pandemic」)がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
中間年度となる2年目には計画書に記載したように、理性的かつ能動的な営みとしての国際法の構成を示す(①静態的(static)現象学)を超えて、「欲望相関性:国際人権法の意味と価値の生成」に関する段階、すなわち、「生き生きした現在」において時間と他者の明証性を問う受動的綜合としての先-構成へと遡行する段階に立ち入った(②発生的(genetic)現象学」)。上記の論文(国際法『学の危機と超越論的現象学』)に加えて、国際法律家の能動的志向性より以前に働いている受動的志向性(間身体性(intercorporeality))を捉える論稿も順調に書き進めている(執筆中:「The Phenomenological Embodiment of International Lawyers」)。 本年度は、最終年度となる3年目の内容、つまり、「言語ゲーム:国際人権法の普遍性の間主観的確信」にも着手できた。この段階では、共時的な共同体を超えた通時的な世代性の位相を視野に入れて、歴史や伝統を連鎖させる言語の機能を視野にいれていく(③世代的(generative)現象学」)。この方法論を取り入れた議論として、国際文書である世界人権宣言と国内文書である日本国憲法の両方において、人権の物語がどのように世代を超えて語り紡がれてきたかを辿る論稿を書き進めている(執筆中:「世界人権宣言と日本国憲法」)。世代的現象学の観点は、より広く共約不可能な他者と「会話(conversation)」を続けていくための理論的枠組も提供することになる。以上の理由から、本研究は当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる3年目は、②発生的現象学に関する研究業績を公表するとともに、③世代的現象学に関する論稿を執筆していくなど、本課題の計画を完結させるためのアウトプットに注力していく。上記に示した論稿以外にも、本研究の知見を現在のCOIVD-19パンデミックの文脈に応用する論稿(執筆中:「COVID-19の生政治に抗う「尊厳ある生」への権利」)、本課題が国際法と現象学を架橋するうえで重要な参照点となった書籍の翻訳と評釈(ジャン・ダスプルモン『信念体系としての国際法』「訳者解説-国際法信念体系を編み直す」、本課題の方法論を国際法の歴史・理論の文脈に当てはめる国際共同研究(推進中:「Histories of International Legal Theories in Japan」)など、同時並行で進展させていく予定である。 これらの研究を遂行するうえでは、国際法学や同じく公法分野に属する憲法学といった法学的知見だけでなく、哲学分野における現象学との接合が必須となる。今後の研究では、学際的知見を獲得するためにも、現象学を専攻とする研究者との対話の機会を国内外で拡大していく予定である。
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Causes of Carryover |
主にCOIVD-19パンデミックの影響により、当初より予定していた国際出張がキャンセルとなったために、旅費について大幅に次年度使用額が生じた。次年度使用額については、状況が改善すれば当初の予定どおり旅費に当てていくが、改善の見込みがない場合でも、学際的な研究に必要な物品、国際共同研究や英語論文公表のための校閲などで人件費などが発生する予定である。
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[Journal Article] Japan2020
Author(s)
Yota Negishi
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Journal Title
Bonavero Report : A Human Rights and Rule of Law Assessment of Legislative and Regulatory Responses to the COVID-19 Pandemic across 27 Jurisdictions
Volume: 7/2020
Pages: 262, 278
Peer Reviewed
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